ひとりで着替えができるようにと、娘さんのためにボタンを工夫したのがきっかけで、障害のある人に使いやすいスモックやエプロンなどを手がけるようになった小峰さなえさん。トビラコの「できたショップ」でもスモックとエプロンを販売しています。

小峰さんの商品づくりの原点は「できた」体験を増やすこと。それはそのまま小峰さんの障害をもつ娘さんの子育ての話にもつながります。
喫茶室トビラコにお招きして、じっくりとお話をお聞きしました。

聞き手は編集者でライターの江頭恵子さん。
江頭さんは、ベストセラー『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(栗原類著 KADOKAWA)をはじめ発達障害に関する著書を多数手がけています。

「できる」を増やしてあげたい

第4回

わが子にあった療育の選び方

今回のお話のポイント

●スモックは実際に着る人の声を聞きながら改善。

●通う大変さがない在宅療育。主治医から指示書の発行を受けたうえで、医療証があれば自己負担なし。

●幼児期からの療育が小・中学校時代に形になる。

 

江頭

障害とひと口にいっても、苦手なことや困っていることは、ひとりひとり違います。

小峰

福祉センターなどで、いろいろな障害を持つお子さんとお友達になり、学ぶことができました。また、訪問療育に同行して、どういうものが必要かを考えています。

江頭

利用者の方が近いのがいいですね。

小峰

「生のご意見」をお聞きできることは、とてもありがたいことです。

江頭

作業療法士など療育の専門家の意見を取り入れられるのも大きいですね。

小峰

専門家の意見は大きいです。自分では思いつかないアイデアをもらったり、改善点を指摘してもらえたりします。

江頭

このスモックは「東京都トライアル発注認定制度」の平成26年度の認定商品だそうですね。

小峰

療育・自立支援用として認定されました。都立の特別支援学校や、その他の療育機関、大学の先生方等から注文していただいています。

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意外と知られていない訪問療育

 

江頭

ところで、訪問療育というと、介護保険が使える高齢者向けのサービスだと思っていましたが、お子さんも利用できるのですね?

小峰

はい。小児もできます。肢体不自由のお子さんもいるし、自閉症などの知的障害のあるお子さんもいらっしゃいます。でも、いまは小児を診ることができる作業療法士が少ないのも事実です。

江頭

家に来てもらうと、かなり高いのではないですか?

小峰

例えば、東京都の場合ですと、まず主治医に診察してもらって、「療育が必要」と診断された場合、指示書を発行していただいたうえで、保険診療になるので、医療証があれば自己負担がなく、実質的に無料になります。

江頭

それは、助かりますね。

小峰

希瑛(きえ)が小さかったころにはなかったもので、今も、在宅で療育が受けられると知らない人が多いです。

江頭

療育施設に連れて行くと、先生に「やってもらう」感じになるけど、自宅だと、その後も継続的にできることを教えてもらえるのもメリットですね。

小峰

そうなんです。月に2回とか、療育施設に出向いて療育を受けても、果たして自宅でどれくらい継続できるかは疑問です。週に1回、忘れないうちに、また家に来てもらえるのはすごく大きいと思います。

 

動いているものを目で追うトレーニング。

東京リハビリテーションサービスが運営する「おれんじ学園」の作業療法士さん手作りの教材。ペットボトルを逆さにすると入ったビーズがゆっくり動きます。動いているものを目で追うトレーニング。

 

 

目を合わせなかった自閉症の子が中学校で挨拶するように

 

江頭

療育を受けると、お子さんは変わると思いますか?

小峰

希瑛の同級生に、自閉症のお子さんがいて、幼稚園の頃は挨拶もできず、目も合わない。偏食で音も苦手でした。そのお母さんはすごく一生懸命で、遠くまで療育に通い続けていました。

江頭

大変だったでしょうね。

小峰

他の療育施設にも通って、小学校では給食を食べられるようになり、中学に入って、挨拶もできるようになったんです。最近では「涼しいね」と感情を言葉にできるようにもなってきました。お母さんが積み重ねてきたものが、10年以上経って、いま形になってきているのです。

江頭

そのお母さんの頑張りに頭が下がります。よかったですね。

小峰

障害の程度や特性はさまざまなので、一概には言えませんが、療育をしっかり受けているお子さんは、「できているな」と感じることが多いです。

江頭

その療育を遠くまで行かなくても、在宅で受けられるのが訪問療育なんですね。

小峰

通うことが大変で続かないケースも多いので、家に来てもらえるのはいいですね。それに、家にあるものを使いながら「できること」を教えてもらえるので、療法士などの専門家と一緒に子育てをできる気持ちになり安心でしょう。

江頭

成長に見通しがたたないと、気持ちばかりが焦って不安になりますが‥‥

小峰

この指導は自分の考えに合っているという所を選ぶことでしょうね。そして、できることから少しずつ、△印を○印にする。できそうなことが○になると、お母さんも頑張れるという良い循環が生まれると思います。

 

手作り教材の写真/五十嵐 公

続く

第1回  娘のために考えた大きなボタン

第2回 必要なことは生活の中で覚える

第3回 自分の時間を大切にするとラクになる

第5回 周囲に知ってもらうと過ごしやすくなる

話し手:小峰さなえさん

株式会社東京リハビリテーションサービスの委託を受けて障害児・者向けの衣服等を考案し自身でミシンをかけて製作。次女が知的障害で手先のことが苦手だったことから扱いやすいボタンを使ったスモックを作り、知り合いに頼まれて作るうちに評判となり、お世話になっている作業療法士(日本医療科学大学の德永千尋先生)と共に開発し同社にて販売。

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聞き手:江頭恵子さん

フリー編集者、ライター。発達障害をテーマにした書籍が多い。
「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」(栗原類著 KADOKAWA)
「育てにくい子にはわけがある」(木村順著 大月書店)
「これでわかる 自閉症とアスペルガー症候群」(田中康雄・木村順監修 成美堂出版)
「これでわかる 「気になる子」の育てかた」(木村順監修 成美堂出版)
「発達障害の子を理解して上手に育てる本 幼児期編」(木村順監修 小学館)
「「小学校で困ることを」を減らす親子遊び10」(木村順監修 小学館)
「発達が気になる子の「できる」を増やすからだ遊び」(笹田哲監修 小学館)
「発達支援実践講座 支援ハウツーの編み出し方」(木村順著 学苑社)
「なんだかうまくいかないのは女性の発達障害かもしれません」(星野仁彦 PHP研究所)
「発達障害に気づかない母親たち」(星野仁彦 PHP研究所)「4歳までの「ことば」を育てる語りかけ育児」(中川信子著 PHP研究所)
「子どもの発達に合わせたお母さんの語りかけ」(中川信子著 PHP研究所)
「子育てのモヤモヤ・ウツウツが晴れる本〜こころがラクになる考え方」(中川信子 伊藤郁子 花山美奈子 共著 PHP研究所)

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