
ひとりで着替えができるようにと、娘さんのためにボタンを工夫したのがきっかけで、障害のある人に使いやすいスモックやエプロンなどを手がけるようになった小峰さなえさん。トビラコの「できたショップ」でもスモックとエプロンを販売しています。
小峰さんの商品づくりの原点は「できた」体験を増やすこと。それはそのまま小峰さんの障害をもつ娘さんの子育ての話にもつながります。
喫茶室トビラコにお招きして、じっくりとお話をお聞きしました。
聞き手は編集者でライターの江頭恵子さん。
江頭さんは、ベストセラー『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(栗原類著 KADOKAWA)をはじめ発達障害に関する著書を多数手がけています。
「できる」を増やしてあげたい
周囲に知ってもらうと過ごしやすくなる
「初めてお読みなる方は、第1回目からどうぞ。
今回のお話のポイント
●特別支援学校に通っているが、校区の学校の運動会に参加して大歓声を浴びた。
●姉のバスケの試合に連れていった。最初は「?」だったのが、いつの間にか「かわいい」と声をかけてくれるようになった。
●「できない子じゃない、こうしてもらえると、みんなと一緒にできるよ」と伝えると、まわりの子どもたちは「なるほど」と思ってくれる。
運動会で地域の学校の子と一緒に走る
江頭
希瑛(きえ)ちゃんは、いまは特別支援学校に通っているのですね?
小峰
はい。普通級にするかすごく迷いましたが・・・。どうしても健常のお子さんと過ごしたいという親御さんもいれば、特別支援学校で専門的な指導を受けたいという親御さんもいると思います。
江頭
小学校から特別支援学校ですか?
小峰
はい。健常のお子さんと一緒に生活できたらいいなと思うけど、近くに副籍交流ができる学校があったので、特別支援学校を選びました。
江頭
副籍交流とは?
小峰
特別支援学校ではない場合に通う地域の学校と交流ができて、運動会などにも参加できるんです。希瑛は走ることが苦手ですが、「出たい」というのでみんなと一緒に走らせ、あえて放送でも名前を言ってもらうんです。すると大歓声です。
江頭
応援してくれるんですね。
バスケの試合で姉の友人たちが娘にハイタッチ
小峰
そういう所でも触れ合って、「あぁ、こういう子がいるんだ」「頑張ってるんだ」ということをアピールしたい。すると、街で他の障害児や障害者と会った時に「あ、あの子と一緒だ」と思ってもらえると思うんです。

ばばばあちゃんのかるたがお気に入り。
江頭
知らないから、どう声をかけたらいいか、どんな風にお手伝いすればいいのかわからないことが多いですものね。
小峰
だから、あえて、お姉ちゃんのバスケの試合にも連れて行っていました。最初は「は?誰?」みたいな視線で見られるんですが、2、3回乗り越えると、「すごく、かわいい」と、声をかけてくれるようになりました。
江頭
希瑛ちゃんは、ニコニコしていて愛嬌がありますものね。

パズルも大好き。世界の国旗のパズルで遊ぶ希瑛(きえ)さん。
小峰
そのうち、ゴールの後に希瑛にも「ヘイ」とハイタッチしてくれたり。そういうことをみんなに知らせることで、本人も家族も過ごしやすくなる。子どもの頃から触れていると、「○○ちゃんと同じだね」という対応になりますよね。それはすごく大事だと。
江頭
勇気もいることだと思います。偉いわ。
小峰
あえて、すごいところをアピールするんです。「この子って、すごいんだよ」と、みんなができないことを言うと「すごい!そんなことできるの?」と驚かれる。「できない子じゃないんだよ」「こうやってもらえば、みんなと一緒にできるんだよ」「特別じゃないんだよ」と伝えると、子どもは素直なので「なるほどね」と思ってもらえます。
連載「できたを増やしてあげたい」はこれで終わります。ご愛読ありがとうございました。