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2018.09.03

トビラコへようこそ!
 

あなたの話を聞いて涙を流してくれる人が、あなたの味方になるとは限りません。
 
味方になってくれることもあるかもしれませんが、あまり期待しないほうがいいです。
 
トビラコ店主の弟と妹には障害があります。それほど珍しいことではないんですが、障害と無縁の境遇にいる人にとっては、とても特殊な世界のように映るらしいです。で、いろいろな反応をされます。涙を流す人もいます。
 
え? それ、泣くような話? そんなに可哀想に見えるのかしらん、とこっちが戸惑ってしまいます。
 
なので、あまり話さないようにしていました。
 
ただ、必要があって話さなければならないことがあります。
 
tobiracoを立ち上げる前もそんな人に会いました。
 
最初は発達障害の子のための雑誌をつくって、同時に道具も売ろうと考えていました。
 
そこで、ある小さな出版社の社長に相談したところ、その社長が泣きの人だったのです。
 
私に障害のあるきょうだいがいるといることを知り、ポケットからハンカチを出して涙を拭い「力になりたい」と言ってくれました。
 

でも、次に会った時は、そんなことはなかったかように接したのでした。
 
結果として、それでよかったと思います。
 
雑誌というのはとてもお金がかかります。お金がかかるわりに収益が少ない、わりのあわない事業です。
 
もし、泣きの社長が本気出して雑誌作りに力を貸してくれていたら、tobiracoはなかったでしょうし、今販売している道具もなかったと思います。
 
そして、その雑誌は3号雑誌(3号出して廃刊になる雑誌を出版業界では、こう呼んでいます)で終わっていたでしょう。いや、1号で終わっていたかな。
 
 
もうひとり、泣きの人に出くわしたことがあります。こちらはちょっと深刻。
 
妹が手術をしなければならないかもしれないという事態に陥った時です。
 
意思疎通がうまくできない妹に術後の生活は耐えられません。福祉のコーディネーターの人に相談したりして、思い悩んでいたところある人を紹介されました。
 
その人は、私が病院で検査に付き添った話を聞きながら涙を流しました。
 
検査の付き添いは、わりとおもしろかったので、そのときも、泣くほどのことなのかしらん、とは思いました。
 
その人は涙をぬぐいながら、次のようなことを話してくれました。
 
「あるエネルギーを放つ水を与えるから、妹さんに会わせて。手術をしなくてもすむようになるかもしれない」
 
エネルギー水には、お金がかかります。高額だけど出せない金額ではありません。その時は、もしかして効くかもしれない、効かなかったとしても惜しくはない金額(高額とはいえ定期を解約するほどの金額ではない)だし、出してもいいかもしれないと思いました。
 
人間、藁をもすがりたい気持ちになると、後から思えばとんでもない判断をしてしまうんですよね。
 
ただ、私ひとりの判断でしていいものかと迷い、家族に相談したところ猛反対されてやめました。
 
結果、やめてよかったと思ったのは、そのエネルギー水をすすめてくれた人の身内が癌に罹ったと知ったときです。その人が真っ先に選んだのは手術と化学療法でした。
 
あれ? なぜ、あのエネルギー水は使わなかったの? 癌患者を治したって言っていたのに? と思いました。結局、ご自身がエネルギー水を信じていなかったということなんでしょうね。
 
余談ですが、障害のある人、身内に障害のある人は、こういう話に出くわすことは珍しくありません。
 
発達障害を治す水、癌を治す水なんてありません。あるなら、なぜ厚労省に認可を申請しないんでしょうか。世の中をよくしたい、人の役人たちたいなら、どうしてそれを医師会なりに相談して医師を通して申請しないのでしょうか。
 
ファミレスや居酒屋で「ここだけの話」「あなたなら信じてもらえる」と言って伝えるよりも、公の機関や専門家を通した方がはるかに広く普及できるはずです。
 

迷ったら、その場で決めないことです。まず家族に相談しましょう。家族に相談するのが無理そうなら、他の人に相談しましょう。自分一人で判断するのは危険です。自分だけは大丈夫と思わないように。
 
で、妹は手術をしなくてすみました。主治医に相談したところ次のように言われました。
 
「術後はたしかに大変だよね。今は、元気で食欲もあるし、様子をみよう。手術しなくても命にかかわるほどのことでもないしな。異変があったら、すぐにいらっしゃい、いつでも診るから」と言われました。
 
続けて
「あ、それから、元気でモリモリ食べられるように、歯だけは大事にしてよ」と歯医者さん通いをすすめられました。
 
体の力が抜けるほど安堵しました。
 
長くなりましたが、一言。涙を流した人があなたの味方になるとは限らない、ということが言いたかったのです。
 
味方になることも、もちろんありますけどね。ともかく、泣くのはその人の問題です。泣きたいから泣いてるだけなんだ、と思っているくらいでいいんじゃないでしょうか。
 
本日は、書いているうちにどんどん長くなってしまいました。最後まで読んでくださってありがとうございます。

 
 

トビラコ店主より

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