トビラコへようこそ
~店先で、ちょこっとおしゃべり~
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子ども部屋で勉強する子は少ない。
これは、私が編集者時代に取材した実感です。
当時、月に1〜2回くらい、有名な先生が読者の家を訪ねる「家庭訪問」と、住宅をテーマにした連載を担当していました。
どちらも実際にその家を訪ねるのですが、子ども部屋に勉強机はあっても、物置になっていたり、ほとんど使われていなかったり。
結局、ダイニングテーブルで勉強する子が多かったのです。
そこで特集を組み、「子どもたちは、どこで勉強しているのか」をテーマに、日本全国の読者の家を訪ねました。
そして得た結論が、子ども部屋で勉強する子は少なく、ダイニングやリビングで勉強する子が多い、ということでした。
当時、「リビング学習」という言葉も生まれました。
では、なぜ、子どもは子ども部屋で勉強しないのでしょうか。
これについて、あるベテランの先生が言いました。
「低学年の子は、部屋で一人で勉強するのは寂しいんだよ」
ああ、確かに。
家族の楽しげな声が聞こえるのに、そこに行けない。部屋にこもって一人で勉強。
これは寂しいですよ。
まだ勉強に慣れていない子なら、なおさらです。
親がそばにいるだけで、安心して勉強ができます。
教科書に書いてある漢字を忘れたら、「これ、なんて読むの」とすぐ聞けます。
そこで取材の前に、ひとつ仮説を立てました。
低学年のうちはリビングやダイニングで、高学年になったら自分の部屋で勉強するようになるのではないか。
ところが、実際に聞いてみないとわからないものです。
なんと、大学受験の勉強もダイニングでしていた、という人がいました。
家族がテレビを見ていたり、誰かがお茶を飲んでいたりする、そのすぐそばで受験勉強をしていたのです。
集中できる環境というと、「静かな場所」「一人になれる場所」を思い浮かべがちです。
でも、その人にとっては、人の気配がする場所のほうが集中できたのでしょう。
安心に勝る環境なし、と私は考えています。
勉強をするときに安心できる環境を求めるのは、低学年でも高校生でも、案外変わらないのかもしれません。
ただ、おもしろかったのは、漫画を読むのは自分の部屋で、という子が多かったこと。
漫画を読んでいるときは心細くないからでしょう。
むしろ、親にはそばにいてほしくない。
自分の世界にどっぷりつかりたい。
勉強するときはダイニング。漫画を読むときは自分の部屋。
こうして子どもたちは、その時々で自然と自分に合う環境を選んでいたのだと、今になって思います。
当時は、そんなふうには考えていませんでした。
今なら「環境調整」と言いたくなりますが、この言葉を知らなくて良かったのかも。
無理に言葉に当てはめなくてもいいのかな、と思ったりします。
トビラコ店主
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