トビラコへようこそ！
〜店先で、ちょこっとおしゃべり〜
「（障害のある）こういう子なので、よろしくお願いします」
行事の集まりで、こう挨拶する母親の姿を見て、おかしいと感じた人がいます。ドキュメンタリー映画監督の井出洋子さんです。母親にこんなことを言わせる社会に疑問を感じたといいます。
井出さんは、縁あって、放課後等デイサービスのさきがけとなった「ゆうやけ子どもクラブ」（1978年設立）のドキュメンタリー映画を撮影することになりました。
それまで、方デイをまったく知らなかった井出監督。
だから、映画ではひたすら子どもの姿を追いかけていきました。追いかけて、追いかけてフィルムを回し続けて、ついにはカメラマンが肩を壊したほど。
そうしてできあがった映画は、泣けるほどいい映画でした。泣かせようとして作っているわけではないのだけれども。
「放課後活動は、あらかじめ決められた範囲内のことをやっているのじゃなくて、場合によっては遙か彼方まで子どもと一緒に飛んでいくつもりで」と、療育の方針を語る代表の村岡真治さん。
井出監督は、まさにこの方式でフィルムを回し続けました。
「自閉症の子は、こういう特性があるから、この場面を撮る」というような型にはまったものではなく、先入観なしに撮っていったことがよかったんですよね。
「ゆうやけ子どもクラブ」の「場合によっては、子どもと一緒に飛んでいく」療育は、とてもゆるく見えるのですが、じつは全然そんなことはありません。
その子の３年間の記録（事実）に基づいて、子どもの変化、成長をきっちり把握しながらの療育です。井出監督によると、「何年も遡った事実を前に、今を見るというのは、ドキュメンタリー映画の手法そのもの」と、驚いていました。
すぐに結果の出るものばかりが療育ではなく、子どもが育つには時間がかかるし、それを待つのも療育。「ゆうやけ子どもクラブ」に療育の本質を見る思いがしました。「待つ」のも立派な支援です。
この映画の母親同士のゆるいおしゃべりの場面もいいんですよね。子育てを大変さを互いに共有しあって、そうそうと語り合える仲間がいる、というだけで随分と気持ちがラクになるのではないでしょうか。
お伝えしたいエピソードがいっぱいの映画、細切れにご紹介していいますね。
トビラコ店主より
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