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〜店先で、ちょこっとおしゃべり〜
リエゾン こどもの心診療所(ヨンチャン画 竹村優作著 講談社)は、発達障害の子どもの診療所が舞台の漫画です。まだ途中までしか読んでませんが、強くおすすめします。
漫画のいいところは、日常生活のありがちな場面を切り取って見せてくれるところです。それを見て、なぜ?という疑問に思う言動が、じつは特性からくるものだったのだということがとわかります。
たとえば、自閉症の男の子の章。
男の子は絵がとてもうまくて、ものすごく緻密な絵を描きます。しかし描いた絵を母親には見せようとせずに、父親に見せます。両親は離婚しているので、父親の会社にまで絵を見せに行きます。その姿を見た同僚が、「わざわざ、会社にまできてくれるなんてかわいいじゃないですか」と言うと、「自分の子どもなのであたりまえですけど」とにこりともせず答えます。ここでの父親のにべもない反応も、のちに読者はなるほどと思うのですが。
なぜ、わざわざ父親の会社にまで絵を見せに行くのか。そして、なぜ母親に絵を見せようとしないのか。
その理由を医師が言い当てます。
なんと言ったか。「うまく描けたらお母さんに見せてね」と言ったからでした。つまり「うまく描けなかったら、見せるな」と彼は受けとめていたのです。そして「うまく描けているかどうか」を父親にチェックしてもらいに行っていたわけです。いや〜、こんなことはわからないですよね。
母親が回想する場面。
「明日、午前中、学校が休みだから、ちょっと夜更かししちゃおうか」と母親が、いたずらっぽく男の子にいうと、男の子は憮然とした表情で「ちょっとって、何分ですか?」と聞きます。戸惑う母親。そして、別れた夫がまさにそうだったと思い出します。
妻が「もう少し家族のことを考えてくれても・・・」というと、夫は「もう少しって、どのくらい?」「どのくらい、誰に何をしたらいいの?」と返すので、「それくらい自分で考えてよ」と妻はキレます。このあたりが離婚の一因でもあったのでしょう。夫もまた自閉症だったのです。
そう、私たちが思わず使っている「うまく(描けたら)」とか「ちょっと(夜ふかし)」とか「もう少し(考えて)」という曖昧な言い方は、自閉症の特性がある子(人)には通用しないことを、この漫画は教えてくれます。
監修は児童精神科医の三木崇弘 原作協力は児童精神科医のDr.けい。 取材協力もすごいですよ。次のように書かれています。
杉山登志郎先生と子どものこころの診療所のみなさま、福井大学子どこのこころの発達研究所センターのみなさま、埼玉県立小児医療センター・船橋敬一先生、Neccoカフェ、川島美由紀さん、そのほかにも多くの医師、施設など、様々な方にご協力いただきました。
ふ〜、この面々を見ただけで信頼のおける漫画といえます。発達障害の世界の第一人者、杉山登志郎先生はじめ、専門医や施設などの協力を得て作られています。おそらく、このかたたちは、「伝えたい」「知ってほしい」という思いから協力しているのでしょう。
ところで、先ほどの自閉症の子、母親に「うまく描けたね」と言われて涙を浮かべます。
なまじ知的な遅れがないだけに、誤解される発達障害の子たち。研修医が「毎日一緒にいてもわからないことがあるんですね」というと、診察にあたった医師は次のように答えました。
「『わからない』を自覚して受け入れることが、理解の第一歩です」
発達障害を描いた漫画も、随分と成熟してきましたよね。それこそ、少しずつ理解が進んだのかもしれません。しばらくは、この漫画に没頭しそうです。これはという箇所に出会ったら、また報告しますね。
トビラコ店主
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