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2020.08.19

トビラコへようこそ!

〜店先で、ちょこっとおしゃべり〜
 
 

最良の母親とは、まあまあの母親のことである。
 
これはイギリスのドナルド・ウィニコットという小児科医の有名な言葉です。ウィニコットは、精神科医でもあります。この名言を待合室に貼っている小児科のクリニックがあると聞き、センスのいい先生だなあと思いました。
 

ウィキペディアで調べてみると、「まあまあの母親」ではなく「ほどよい母親(good enough mother)」と訳されていました。「まあまあ」と「ほどよい」では若干ニュアンスが違いますね。good enough motherだと「ほどよい」のほうが、近いのかなあ。
 

「ほどよい母親」というのは、適度の心身の世話によって、快適な環境と、対象としての恒常性を与える母親およびその機能を指す。(ウィキペディアより)
 
ああ、これ、木村順(作業療法士)先生の勉強会で聞いたのに似ているなあと思いましたね。
 
親は虐待していなければ、まずは60点で合格、100点の義務なし、万年60点で合格! 60点というのは、たしか、子どもの衣食住に関しての世話ということだった思います。子どもの世話だけでも親は膨大なエネルギーを奪われるから、もうそこだけできていればいいよということです。
 
なんか、気がラクになりますよね。これ、わりと心ある先生は言いますね。
「清潔な服を着せて、お風呂に入れて、ご飯食べさせて、快適な布団に寝かせるだけでいいんだよ」という先生もいましたっけ。木村順さんとほほ同じです。
 
ウィニコットに戻ります。
「ほどよくない母親」について、ウィニコットは、こんな風に語っています。
 
ほどよい母親になれない例として、強迫的に自己に没頭して幼児に関心を向けられない母親、また幼児に過度に没頭しすぎて同一化し、そのあと急に撤退する母親などが挙げられる(ウィキペディアより)。
 
前者の極端な例は、ネグレクトなんでしょうね。後者は、いわゆる「教育虐待」する親にありがちかもしれません。子どもに散々期待をかけて、自分の思い通りにいかないと急に放任してしまうタイプ。
 

ただ、障害のある子の場合、「衣食住」を満たすだけで、本当にいいの? とちょっと思いますよね。木村先生はすごくいいことおっしゃっています。
 
わが子につまずきがあった場合、その「障害受容」の義務なし。
 
でも、願わくば、わが子を託せる「良き指導者」を見つけ出し、連携すること。
 
「障害受容」と簡単にいいますが、ほんと、これは難しいですよ。わが子だから受け入れなければならないと思う日と、だけど受け入れられないと思う日。この繰り返しだったりする人が多いんじゃないでしょうか。それを「受け入れるべき」と言われてしまうと、「受け入られない」自分は親としてダメなんじゃないかと思ってしまう。いいんです、受け入れられなくても。まずは「衣食住」を満たせれば合格ですから、安心してください。あと、余談ながら「食」についても、偏食の多い子、味覚過敏の子に無理に食べさせる必要なしということも付け加えておきます。これ、小児科の先生から聞いたです。「体がミネラルを欲していれば、土でも食べちゃうよ」って、冗談でしょうが、栄養栄養と騒がなくても大丈夫ということです。
 

お世話になっているカメラマンがお花を習い始めました。


 
 

で、この「良き指導者」(個人的には「良き理解者」も加えたいところ)について。
 

良き指導者ってどんな指導者でしょうか。
 
阿部利彦先生『発達障がいを持つ子の「いいところ応援計画」』(ぶどう社)によると、苦手なことに対して、子どもの興味や関心を引きつけることができる人、うまくできないときは「手伝って」と言ってもいいよと言える人。小さな努力にでも大きな賞賛を贈れる人だそうです。
 
子どもが苦手とすることに、どのように対応できるかで、その先生の力量がある程度見えてくるかもしれませんね。
 
読み書きが苦手なのに、他の子と同じ方法でとことん反復練習させて、ますます嫌いにさせてしまう。これまずい対応ですよね。子どもに「できない」の上塗りをしてコンプレックスを抱かせます。
 
どうやったら、読み書きできるようになるかを考えてくれる先生は、まず子どもがなぜ読みや書きを苦手としているのかを観察します。行の飛ばし読みが多いなら、1行ずつ読めるスケールやリーディングルーラーを使ったりするかもしれません。あるいは識字障害であるなら先生が読み上げたり、読み上げソフトをすすめてくれたりするかもしれません。書字障害ならパソコンでタイピングを教えてくれるかもしれません。先生によっては、他にふさわしい先生や教室を紹介してくれるかもしれません。
 
「苦手ならやらなくていいよ」は、一見優しい指導者にみえます。でも、もしかしたら、別のアプローチだったらなんなくできたはずのことが一生未経験のまま終わってしまうかもしれません。別のアプローチなら、できるようになるかもしれません。なので、興味関心をいかにして引き出すか。これができるのが指導者としてのプロなわけです。そのような指導者を見る目を持ち、連携していけるようになると、重たいと思った荷物が、随分と軽く思えるようになるんじゃないでしょうか。
 
ま、でも、60点でいいんですよ、60点で。100点の母親っているのかなあ、いたら逆に怖いと私なんかは思ってしまいますね。
 
 

トビラコ店主

 

 

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