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子育て相談の記事があるとつい読んでしまいます。
会ったことのない子どもや大人の相談に、限られた誌面(文字数)で答えるのは本当に難しいと思います。回答者の力量も問われます。
私が絶対的に信頼をおいている回答者のひとりが、言語聴覚士の中川信子さんです。月刊誌『発達教育』(公益社団法人 発達協会)の連載「親の気持ち 理解し、支えるために」は、毎回、保護者や支援者の相談に、中川さんが回答。
評判がいいのでしょうね、一冊の本にもなりました。『Q&Aで考える保護者支援:発達障害の子どもの育ちを応援したいすべての人に』(学苑社)、こちらもおすすめですので、よかったらぜひお読みください。
なぜ、中川さんの回答がいいのか考えてみました。きっとこれはいい回答者に共通するのではないかと思います。
相談者の周辺の事情にまで目配りができている。ここが大きなポイントではないでしょうか。
相談する側は、悩み事だけを相談します。
「幼稚園に行きたがらない子」
「子どもを可愛いと思えない」
「障害を受け入れない保護者」
「こちらの要望を聞き入れてくれない教師」
などなど、多岐にわたっているのですが、悩み事の周りには、(もしかしたら本人も気づかない)たくさんのいろいろな「事情」がまとわりついているはずなんですよね。ある日突然、ポコっと悩み事があらわれるわけではありません。そこに至るまでの過程があるのですが、相談する側はそこまでは伝えたりしません。
でも、中川さんは、その周辺をも含めた回答です。新人の保育士さんの相談に対しても園で一丸となっている場合、ますはチームワークがすごくうまくいっていることを評価してくれます。すると、相談した側も、あたり前と思っていたけど、そうかチームワークが大切なんだと気づくわけです。
意表をつく回答もありました。
確か「子どもを可愛いと思えない、自分はダメな親なんでしょうか」という趣旨の相談だったと思います。細かいところは違っているかもしれませんが、ともかく自信をなくしたお母さんの相談でした。
その答えが、「子育ては人手不足なんです」という切り込みかたで回答していらっしゃいました。「気持ちに余裕がないと、子どもが可愛いと思えない」、だからまずは、子どもを見てくれる人を早急に探しましょうというような回答だったような気がします。
これ、本当にそうです。まして障害を抱えている子だとなおさらそう感じるはずです。私も、きょうだい二人が障害を抱えていますが、ほんとに人手不足になります。立派な療育よりも、何もしなくていいから、ともかく、いまこの時間、この子を見てくれている人がほしい。この連続です。なので、私が駆り出されることがままありました。私が、学校休もうかどうしようか迷っていると、母は必ず「休む(人手が増える)ほうに一票」の人でしたからね(笑)。
相談者の周辺にまで思いを巡らせてくれた回答は、相談者自身に気づきを与えてくれます。「深く理解してもらえた」という気持ちになることもあるでしょう。
逆に、「子どもが困った行動をする」という相談に対して、「それは将来が心配ですね」と言われてしまうと、心配が倍増してしまいます。
「将来、ろくな大人にならない」と言われて、立派に活躍している人を、私は何人も知っています。立派じゃなくて、特に問題なく幸せに暮らしている人もいます。将来のことなんて、誰にもわかりません。障害をとりまく環境だって時代とともに変わります。それよりは、いま「困った行動」の裏に何があるのかを考えてほしいと思うのです。「困った行動」は誰が困っているんでしょうか。一番困っているのは子どもではないのでしょうか。そこに思いを馳せることなく、マニュアル的に「親がいまするべきこと、3つのポイント」みたいに羅列されても、本当に解決するのかなと人ごとながら心配になります。
子どもが無理難題を言い出したときは、心が満たされていないとき。
4人の発達障害のお子さんを育ててきた堀内祐子さんは、よくこのようにおっしゃっていました。無理難題の中身をあれこれ分析するのではなくて、この子はなぜ、いま無理難題をいうのだろうか。そこを考えましょうということです。子どもが難題をふっかけてきたとき、堀内さんは、一緒にゲームをしたり、「今晩、何が食べたい?」と子どものささやかな願いを叶えたりしていたそうです。そうしたことを繰り返すうちに、トラブルがだんだんと少なくなったといいます。
困り事だけをなんとかしようとしても、なかなか難しいですよね。そこに至るまでの経緯、その裏に隠れたものを汲み取ってくれる回答者であってほしいなと思います。
トビラコ店主
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『発達障害の子のためのすごい道具』(小学館)
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