トビラコへようこそ!
〜店先で、ちょこっとおしゃべり〜
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「障害のある子は、あなたを選んで生まれてきた」という人がいます。
この言葉は、障害のある子の母親にどのくらい響くんでしょうか。響いている人もいるかもしれないし、そう思わないとやってられないと思う人もいるでしょう。
でも、私は、次のような母親たちの会話を知って、多くの人が感じているのは、こちらではないかと思うのです。
「どんな悪いことをしてバチがあたったのか」
「私は本当にまじめに生きてきたのに」
「なんでうちの子だったのか」
これは、『発達障害の子を育てる親の気持ちと向き合う』(中川信子編著 金子書房)の中の進藤美左さん(NPO法人調布心身障害児・者親の会会長)がご自身の体験として書かれているものです。進藤さんのお子さんは重度の自閉症。障害の診断を受けたとき「全力で否定」し、外の景色すべてが灰色に見えるほどに落ち込んだそうです。
孤独な日々を送るなか初めて笑えたのは、療育施設の母親たちと気持ちをさらけ出して話したときです。先にあげた会話は、たまたま待合室で初対面同士だったときのもの。のちに仲間になります。
子どもの障害の種類も、年齢も、家庭環境も違う人たちと出会い、心おきなく、わが子の障害をオープンにし、そしてわが子がやらかした事件を語り合うことで、笑うことができるようになりました。
やらかし事件とは、干した布団の上にポテトチップをぶちまけたり、サラダ油を床にきれいに塗り広げられたり。そんな日常の事件です。そのうちに、進藤さんは子どもが何かやらかしたときには「これを、今度は自慢しよう」と思うようになります。そしてみんなで、やらかし事件のひどさを自慢しあおうようになって爆笑しあったといいます。
当時、私たちは、無理にでも笑わないとやっていけなかったのだと思う。
一緒に散歩をして「ああ、この橋よ! ここからこの子と飛び降りたら全部楽になると思った橋だわ!」と言いながらゲラゲラ笑ったり(普通の人にそんな話をしたらドン引きだが、みんな平然と、あるある、と笑ってくれる)。
進藤さんは、この仲間たちと助け合い、だれかが入院したと聞けば、兄弟の保育園のお迎えを交代でしたりもしてきました。
ここで得たのは「運命共同体」のような友だちでもあったが、同時に、「自分は無力な存在ではない」「支え合って、自分たちの力で生きていける」という感覚ではなかったかと、今は思っている。
進藤さんのこのページを読むたびに胸が熱くなってきます。そして、オープンになんでも話せる仲間がいることがどれほど心強いことかと思うのです。
私の母は、ふたりの障害児(いまは、者)の母でもあります。若い頃、これができませんでした。「うちの子のほうが、あの子よりもマシ」と思いたがっていたからです。他の子と比べているうちは心開いて話すことができません。
それよりは、あっけらかんと「やらかし」自慢のできる仲間をみつけたほうが、気持ちが楽になります。自分からわが子の「やらかし」自慢をしてもいいではないですか。そうすると、みんな「うちも、あるある」になると思います。
「障害のある子は、あなた(私)を選んで生まれてきた」という「選民意識」があると、「やらかし」自慢ができなくなってしまうし、まして「橋から飛び降りようと思った」話は、決して口にはできなくなりますよね。愚痴を吐く子もは許されなくなってしまうでしょう。なので、私は、どうしても違和感を覚えてしまうのです。でも、ほんとうに「選ばれた母」と思って子育てしている方がいたらごめんなさい。それはそれで尊いと思います。でも、みんながそのように思えるわけではないということをどこかで言いたかったのです。
トビラコ店主
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トビラコが編集した本
『発達障害の子のためのすごい道具』(小学館)
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