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(昨日、配信のメルマガの記事を再掲します)
障害は個性?
議論百出の、この問題について考えてみました。正解があるわけではありません。
だれが、どの状況で「個性」とするかでも大きく変わります。
「かけ算九九ができないのも個性」。
そう考える人たちがいることを新聞で知ったのは20年くらい前のこと。違和感がありました。個性だから教えなくてもいいのか、覚えなくてもいいのか。そもそも、かけ算九九ができない子は困っていないのか。
いま思えば、知的能力に問題があるわけではなく、学習障害(算数障害)の子を指していたのかもしれません。
伸ばしたいもの、大切にしたいものが「個性」であるとするなら、「かけ算九九ができない個性」を伸ばしたい、大切にしたいと思う人はいないでしょう。
支援する側(行政も含む)が「個性」と言い切ってしまうことには、慎重であってほしいなと思います。
配慮や工夫で、その子の困り感が解消されていたかもしれないのに「個性」という名の下に、支援を放棄されかねないからです。
でも、親ならわが子の「個性」という見方をしてもいいんじゃないかなと思い、当時編集していた雑誌の連載に「発達障害という個性」という言葉をタイトルに入れてしまいました。
すぐに自分の浅はかさを思い知らされました。
「個性なんて言わないでほしい、そんなことを思っている親はいない」
発達障害のお子さんをもつライターのかたから、静かに反発されました。面と向かって私に言ったのではありません。雑誌のタイトル見ながら思わず口をついて出た呟きという感じです。
連載自体はとても好評でした。でも、タイトルで多くの親を傷つけてしまったかもしれないという苦い思いを最後まで拭うことはできませんでした。
以来、「障害」と「個性」の問題から距離をおくようにしました。が、最近、あるお母さんの話を本で読んで、再びこの問題が頭をもたげてきました。
ADHDと診断されたお子さんのお母さんの話です。
投薬で治療をするようになってから、お子さんが落ち着くようになったそうです。黒板に書かれたお知らせもきちんと連絡帳に書いてくるようになりました。
でも、そのお母さんは学校の掲示物をみて複雑な思いにかられるようになります。以下、本から抜粋します。
「以前は学校へ行くと廊下に貼られたこの子の絵が勢いよく目に飛び込んできた。今は捜さなければ見つからない。画用紙の枠からはみ出すほどの力強い絵は、この子ならではの迫力だった。薬をのみはじめてからは、ほかの子どもたちの絵と同じように上手にまとまってはいるものの、個性のないものになってしまった」
子どもの名前が書かれた絵を見ながら「うちの子の絵ではない」と感じ、毎朝、薬を飲ませるたびに自分が子どもの個性を奪っているように感じるという。
(『発達障害のある子と家族の支援』中田洋二郎著 学研プラスより)
最初に断っておきますが、薬を否定しているわけでは決してありません。薬を飲むことで本人の困り感が少しでも解消されれば、それに越したことはありません。いい薬が開発されることも願っています。
ただ、この話を読んですぐに思い出したのは、「定型発達の子は粒ぞろいの子」という木村順さん(作業療法士)の言葉です。
縦6列×横5列の箱にきちんと収まったりんごは、粒ぞろいです。でも定型発達ではない子を30個入りの箱に収めるのには無理があるというのです。工夫や配慮が必要ですし、箱そのものを変える必要もあるかもしれません。
先のお子さんは、薬を服用することで粒ぞろいになりました。他の子と同じ粒になったとき、初めて、お母さんはわが子の「個性」に気づいたのでしょう。
だからといって薬をやめたかどうか、わかりません。やめていないのではないかと思います。でも、お母さんとしてはどうしても絵のことは言いたかったのでしょうね。
結論のない話です。
もしかしたら、障害と個性を二項対立として語ることに無理があるのかもしれませんね。あるところでは「障害」になり、別のところでは「個性」になり。また、障害でも個性でもなくなるということもあるかもしれません。環境によって、時代によって変わってきます。どちらかに決めるという話ではないんでしょうね、きっと。
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