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2021.01.30

トビラコへようこそ!

~店先で、ちょこっとおしゃべり~

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(1/30配信のメルマガの一部を転載しています。)
 

発達に課題のある子を理解するのに「感覚統合」という視点は欠かせません。
 
なぜ、じっと座っていることができないのか。
なぜ、人と手をつなぐことができないのか。
なぜ、友達を叩いてしまうのか。
なぜ、すぐに耳をふさいでしまうのか。
なぜ、文字を書くことができないのか。
 
なぜ、なぜ、なぜ。。。。
 
ほかにも、たくさんの「なぜ」を抱えているのが、発達に課題のある子たちの言動です。
「感覚統合」を知ることで、おそらく「なぜ」のかなりの部分を理解できるようになると思います。
 

感覚の交通整理

 
「感覚統合」とは、ひとことでいうと、感覚の交通整理です。

私たちの脳には、常に無数の感覚が入り込んできます。それは、まるで細い無数の川がひとつの湖に常に流れ込んでいるような状態です。ただ、無数の感覚をうまくふるいにかけることができるため、ひとつのことに集中できます。あるいは、その場にふさわしくふるまうことができます。
 

 

たとえば、このコーナーの文字を読むために、首を伸ばし、頭を適度に傾けて、体を安定させています。一定の姿勢を保つ行為も、じつは無意識の感覚がなせるワザです。外で車の音がしたり、隣の部屋からコーヒーの匂いがしても、それらの感覚という情報もふるいにかけています。そうしながら、文字を読むことができているわけです。

感覚という情報をふるいにかけて、整理する。これが感覚統合です。あちこちから入り込む感覚の交通整理です。交通整理ができないと、脳の中の神経は大渋滞とおこしてしまいます。大事な情報に集中できなくなってしまうのです。

感覚統合という見方を最初に「発見」し、提唱したのは、アメリカの作業療法士A・ジーン・エアーズ博士(故人)。1960年代のことです。エアーズ博士は、著書で「感覚統合」を次のように説明しています。

 

 

感覚統合とは
・脳の無意識のプロセスである(呼吸と同じように、自分で考えることなく生じる)。
・感覚(味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、動きの感覚、重力覚、位置覚)によって感知された情報を組織化する。
・すべての情報をふるいにかけ、意識を向けるべき情報を選択する(外の車の騒音を無視して先生の話に耳を傾けるなど)ことで、経験に意味を与える。
・状況に合わせて意図した方法で行動したり反応したりできるようにする(「適応反応」という)
・学校の勉強や対人行動の基礎となる土台をつくる。

(『 子どもの隠れたつまずきを理解する 感覚統合の発達と支援』(A・ジーン・エアーズ著 岩永竜一郎監訳 古賀祥子訳 金子書房)より

 
このなかのいくつかは、わが子にあてはまりそうと思った方もいらっしゃるかもしれませんね。エアーズ博士によると、感覚統合が完璧にできている人間は、ひとりとしていないそうです。だれでも、どこかしらに不完全さを抱えています。ただ、生活に支障をきたすほど、感覚統合が機能不全に陥ってしまうと、やはり支援が必要で、それを発達支援と呼んでいるのです。
 

感覚統合を意識した療育を
 
感覚統合の機能不全は、適切な支援を受けることで、うまく発達していきます。できれば、早いうちの支援が望ましく、エアーズ博士によると7歳くらいまでだそうです。もちろん、7歳をすぎると手遅れだとかいった話ではありません。
 

 
なぜ、7歳なのかというと、抽象的な思考や観念が入り込む前だからです。
 
人生の最初の7年間は感覚運動の発達の時期だそうです。この時期に、動いたり、話したり、遊んだりすることで、読み書きや好ましい行動をするのに必要な感覚統合の土台ができるそうです。感覚運動の過程が十分に組織化されれば、その後、心的スキルやソーシャルスキルを比較的ラクに学習できるのだとか。

 
療育施設ではよく見かけますが、一般には見かけない運動用具があります。
 
たとえば、「ボルダースイング」(通称ちくわ)。
 
丸太状のブランコです。しがみついたり、立ち上がったり、馬乗りになったり。さまざまなポーズで全身運動ができます。これらのポーズの運動にはそれぞれに意味がありますが、いずれも神経系統を刺激し感覚統合を促します。
 
うつ伏せになって乗るスケートボードのような車輪のついた「スクーターボード」も、また感覚統合に至るまでの重要なステップを踏むことができる運動器具。
 
こうした器具をエアーズ博士は、「治療器具」と呼んでいます。運動によって、発達段階で習得できなかった感覚の統合をめざしているので、そのまま治療となるわけです。
 
療育を受けるさいは、「ボルダースイング」や「スクーターボード」がただ置いてあるだけではなく、その目的をはっきり意識している施設が望ましいと思います。つまり、「感覚統合」を理解しているかどうかです。作業療法士、理学療法士、言語聴覚士たちは、だいたい感覚統合に詳しいはずです。療育の施設での面談で「感覚統合」の運動はさせてもらえるかどうかを聞いてみましょう。
 
学習支援でも感覚統合に詳しい支援者は、漢字の練習の前に「ボルダースイング」で30分くらい、神経系統の運動をさせてから学習に入ったりします。読み書きと神経系の働きが結びついていることを知っているからです。

 

保護者ができること

 
感覚統合の機能不全を抱えている子に、保護者は何をしたらいのでしょうか。
 
エアーズ博士は「挫折感や不全感を緩和するために、保護者にできることは大いにある」と記しています。
 
感覚の問題は、外からはわかりません。
 
繋ごうとした手を思い切り振り払われたりしたら、されたほうはいい気持ちはしないかもしれません。でもこれは、その子の(時には恐怖にも似た)感覚の問題であって、その子の人格とは何ら関係がありません。
 
気持ち悪いからとカーペットの上に吐かれたりしたら、周りの人は受け入れがたいでしょう。
 
でも、エアーズ博士は「否定したり、非難したりせずに、大目にみてほしい」としたうえで、どのような行動が社会的に受け入れられるのか理解させ促しましょう、と説明しています。

 

 
「吐きたくなったら、トイレに行くようにしようね」と諭すことはしても、罰を与えたりトイレに行けなかったことを恥ずかしく思わせないこと。つまり、その子の行動について、否定するのではななく「どうしたら、まわりに受け入れられるか」を教える、というように。

そして、子どもを混乱させそうな状況(たとえば、大騒音、予定の変更など)からは、子どもを遠ざけることが、たいせつだとも語っています。

子どもを不安に陥れない、自分を否定するような状況にしない。安心できるようにするのが、保護者ができる最大のことではないでしょうか。
 

感覚統合を理解するうえで、以下の2冊を強くおすすめします。

子どもの隠れたつまずきを理解する 感覚統合の発達と支援』(A・ジーン・エアーズ著 岩永竜一郎監訳 古賀祥子訳 金子書房

育てにくい子には わけがある』(木村順著 大月書店)

 
 
 

トビラコ店主

 

 

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小学館の子育てサイトHugKum(はぐくむ)に連載していました。
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