~店先で、ちょこっとおしゃべり~
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(2/13配信のメルマガの記事の一部を転載しています)
力加減がわからず、乱暴な子、がさつな子扱いに
肩をポンと軽くたたかれて、よびとめられたときに、私たちは自然に振り向くことができます。
でも、バンと思いきりたたかれたらどうでしょうか?
驚いて、身構えてしまいます。相手に対して良い感情を抱くことはできないでしょう。
子どもなら、乱暴な子とみられてしまい、トラブルになりかねません。
じつは、この力加減は、筋肉や関節を通して感じているのです。相手の肩をたたいて呼び止めるなら、このくらいの力加減、というように。
筋肉や関節を通して体の内側から感じることができる感覚を「固有受容覚」といいます。聴き慣れない言葉ですが、「体の内側で受容して感じる感覚」ということです。
豆腐や卵はそっと持ちます。でも、椅子は、ギュッと握って運びます。私たちは意識しなくても、「固有受容覚」がうまく機能しているために、自然と力を加減することができます。
ところが、発達障害の子のなかには「固有受容覚」がうまく働かない子がいます。親しみを込めて相手にタッチしたつもりが、力を加減ができないために、相手をバンバンと叩いて誤解をされ、その結果コミュニケーションもうまくいかなくなってしまいます。
筋肉や関節の動きを実感できないと、コップにジュースを注ぐこともうまくいきません。コップからジュースが溢れ出したのをみて、はじめて注ぎ過ぎたと気づきます。力の加減がわからないだけなんですが、がさつな子とみられてしまいます。
自分の体をイメージできずに、不注意な子扱いに
他にも「固有受容覚」の働きとして、次のようなものが挙げられます。
自分の体の位置をイメージできる。たとえば、私たちは、近くのものをうまく避けながら移動することができます。室内ならタンスやテーブルをよけて歩きます。これは体をイメージできているからです。車を運転していて電信柱にぶつからずに曲がれるようなものです。あるいは、こたつに入って足が視界から消えても足が「消えた」とは思いません。みなくても、足の位置がイメージできるから、消えたと思わずにすむのです。
手足の位置をイメージできていないと、ものにぶつかったり、転んだりということが頻繁におきます。よく見て歩かない不注意な子と思われてがちですが、ボディーイメージが発達していないことが原因。よく見たとしてもぶつかってしまうのです。
遊びで、感覚の調整を
「固有受容覚」をよく理解している最近の療育施設は、ボルダリングをとりいれています。全身を使って、力いっぱい突起を握ってよじ登っていく。この運動は自分の全力を出し切ります。そのあとに、そっと力を使う遊びで力加減を覚えていきます。たとえば、羽子板のような板の上に、最初は落ちにくい布のボールを置いて運び、次に落ちやすい紙風船をのせてゴールまで運ぶといった遊びです。
ボルダリングのように全力を出し切る、いわばアクセルと、ボールを落ちないよう力を入れ過ぎずに運ぶブレーキ。このふたつをうまく使い分ける遊びを、作業療法士さんはすすめています。
ボルダリングが難しいようなら、石垣のような斜面(ワッフルの石垣でもよい)を這いつくばうようにしてよじ登るのもおすすめ。全身を使うことでボディーイメージの発達にもなります。もっと身近な遊具としては、ジャングルジムがあります。ジャングルジムの棒に体をぶつけないように注意しながら、上下、左右、斜めに潜り抜ける遊びです。
室内で遊べるものとしてはタカラトミーの「ツイスター」があります。ポジションゲームと呼ばれるゲームで、色のついた●に、相手の指示にしたがって手足を置いて体のバランスをとるゲームです。
加減を覚えるゲームでは、タカラトミーの「ジェンカ」もおすすめ。家族で楽しめます。ひとりで遊ぶなら積み木をそっと高く積み上げるのもいいですよね。訓練というのではなく、あくまで子どもが楽しめる遊びであることが大事。楽しめると続きます。
感覚調整の障害は、はためにはわかりません。そのため、「できる」ようになるまで練習させたり、乱暴にみえるふるまいや不注意に見える行動が、その子の性格のせいにされたりします。わが子は、もしかしたら感覚に問題があるのでは? と思われたら、作業療法士の木村順さん、高畑脩平さんの「感覚統合」の本をおすすめします。とてもわかりすく解説されています。
次回は、「固有受容覚」と並んで誤解されやすい「触覚防衛」の強い子についてお伝えします。歯磨きや散髪などさわられることを極端に嫌うこは「触覚」に問題があることがほとんどです。
参考文献:『こども理解からはじめる 感覚統合遊び 保育者と作業療法士のコラボレーション』(加藤寿宏監修 高畑脩平 萩原広道 田中佳子 大久保めぐみ編著 クリエイツかもがわ) 『「小学校で困ること」を減らす親子遊び10』(木村順監修 小学館)
トビラコ店主
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小学館の子育てサイトHugKum(はぐくむ)に連載していました。
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トビラコが編集した本
『発達障害の子のためのすごい道具』(小学館)
『発達障害 あんしん子育てガイド』(小学館)