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2021.02.27

トビラコへ、ようこそ

~店先で、ちょこっとおしゃべり~

お試しいただける商品をまとめました、こちらです。

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(2/27配信のメルマガの記事の一部を転載しています。)
 
医師が患者に処方するのは「希望」である。
精神科医・中井久夫さんの有名な言葉です。
 
「希望を処方する」。良い言葉ですよね。障害を支援する人たちの間でも使われていてます。良き支援者とは、「希望を処方」してくれる人なのかもしれません。
 
支援と訓練は違う
 
先日、あるベテラン言語聴覚士の方の研修会に参加しました。
 
言語聴覚士、作業療法士、特別支援学校の教師など、いわゆる「支援する側」の人たちの研修会です。研修会のキーワードとなったのが「希望を処方する」でした。
 
支援者ではない人間が参加すると、「いい支援者」とは、こういう人のことをいうのだということがよくわかりました。
 
この研修から得たものを、いくつかお伝えしていきます。
 

冒頭にご紹介した医師の中井さんは、患者から予後について聞かれ「私(医師)と家族とあなたの三者の呼吸があうかどうかによって決まる」と答えるそうです。つまり、三者の息があうかどうかで、「いかようにも、変わりうる」というわけです。
 
医師を支援者におきかえると、支援者も相手と呼吸にあわせることが大切であり、それによっていかようにも変わるということです。
 
「療育」を例にとってみます。
 
その日に決められていたプログラムがあっても、部屋に入ってきた子どもの様子次第で変えることができる支援者は、子どもと呼吸にあわせているといえます。
 
子どもの様子に関係なく、「本日のプログラム」をこなすことに注力してしまうのは呼吸をあわせていません。療育ではなく「訓練」です。
 
たくさんのプログラムをこなすために、日々、あちこちの療育施設に通っている子をみると、どうしても「訓練」を思い浮かべてしまうのです。
 
子どもと呼吸にあわせるとは、子どもに伴走するともいえます。
 
ある親の会の人からこんな話を聞いたことがあります。
 
重度の自閉症の娘さんの幼稚園時代のことです。
 
「もっとも、心に残っている保育士さんは、障害の知識はあまりありませんでした。でも、娘と一緒に悔しがったり、喜んだりしてくれて、いつも伴走してくれていました。その保育士さんにずっと支えられてきたように思います。娘も私も、いまでも一番好きな保育士さんです」

 

 
先生を、一生恨みます
 

「希望を処方する」とは、耳障りのいいことだけを伝えるのではありません。
 
ときに、支援者はその子の限界を伝えなくてはなりません。親としては、わが子の限界を受け止めることはとてもつらいことです。
 
親は限界を伝えた支援者を恨んだりすることもあります。恨みに恨んだ末、「いまのままでいいんです」「なにもしなくてもいいんです」と言ってくれる支援者にすがりたくなるかもしれません。そんなふうに言われたら、ほっとしますよね、一時的にですが。
 
でも、やれることすべてをやりきったうえで、限界をきちんと伝えてくれるのが良き支援者です。やれることもしないで「いまのままでいいんです」とか、まして限界だけ伝えるというのは支援ではありません。
 
良い仕事をしているベテラン支援者ほど、「一生、先生を恨みます」と親から言われています。でも、長い目で見て「あのとき、先生を恨んだけれど、結局、これで良かった」となることの方が多いのです。
 
「希望を処方する」に置き換えると、「限界はあるかもしれない、けれども、三者で呼吸をあわせてやれば、いくらでも変わりうる」ということになるのだと思います。呼吸をあわせるとは、そのようなことではないでしょうか。
 
きれいごとを並べて、うわっつらだけあわせるのではなく、この子が少しでも成長するために、ときに言いづらいこともいいながらも、長きにわたってつきあってくれる支援者こそが良い支援者です。
 

 
支援者は家族ではない
 
呼吸もあい、ともに子どもの成長を喜びあえる支援者に出会えるのは幸運なことです。
でも、ここでひとつ考えておかなければならないことがあります。支援者との距離です。
支援者に一生、頼り続けることはできません。
 
支援の向かう先はその子の自立です。
 
ともに子どもの成長を喜びあった仲だったとしても家族ではありません。いずれ、別の支援が必要なときがきます。年齢とともに手厚い支援が必要なくなることもあるでしょう。
 
支援者の側からすると、上手に手を離して次にバトンを渡すことが、じつは大切な仕事でもあるのです。「この子は、私じゃなければダメ」という支援者はプロではありません。
 
強い援助(赤ちゃんを抱っこするような身体的な援助)から、徐々に弱い援助(自発的な行動)へと向かうのが、援助のプロセスのあり方です。援助(支援)する人も援助の仕方も、子どもの年齢とともに変わります。
 
手離れの話は支援者が知っていればいいことです。でも距離感を間違えて、せっかくの関係が壊れてしまうのはもったいない話です。
 
いずれ、別れる時がきたら、次にまた「希望を処方してくれる」人を見つける。その繰り返し。子どもは、さまざまな「希望を処方してくれる人」たちに支えられて成長していくのではないでしょうか。
 
 

トビラコ店主

 

 

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小学館の子育てサイトHugKum(はぐくむ)に連載していました。
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