お知らせ一覧

2021.07.19

トビラコへ、ようこそ

~店先で、ちょこっとおしゃべり~

お試しいただける商品をまとめました、こちらです。
 

——————————–

 

障害のある子と同じ教室で学ぶことは、障害のない子にとっても学びになるといわれます。これは、先生がうまくいくように努力していればこそです。
 

私自身、とても苦い思い出があります。小学校5年生の頃です。
 
クラスに、貧しい家庭の男の子がいました。家は、いまでいう廃品回収業。といっても、当時は小型トラックでスピーカーを鳴らしながら町内を回るというスタイルではありません。大きなリヤカーを引いてボロ布や段ボール、新聞紙、ブリキなどを集めてまわる仕事です。今の人には想像がつかないかもしれませんが、町内に1軒くらいは、そういう家がありました。「屑やさん」とか「バタやさん」とか呼ばれていて、家の敷地には鉄屑やらブリキの板やらが、うずたかく積まれていました。
 
男の子は、お風呂もあまり入っていないようで、全身がいつも薄汚れた感じがして、少し匂いもしました。今思えば知的障害があったと思います。
 
みんなで手つなぎ鬼で遊んでいたときのことです。その男の子につかまった私は、直接は手をつながずにハンカチを介して手をつないでしまいました。
 
その日の放課後、私は担任のM先生に呼び止められました。教室にはだれもいません。
 
「Tくんとなぜ手をつながなかったの」と静かに言われました。責めているというのでもなく、諭されるという感じでした。私は謝りました。先生に謝ってもしかたないのですが、そうせずにはいられなかったのです。私自身、後ろめたい気持ちがあり、そこをつかれたという思いがあったからです。
 
M先生は、手つなぎ鬼の様子を、窓からみていたのです。おそらく、いつも、窓からみんなが遊ぶ様子を、とくにTくんがいじめられたりしていないかをみていたのだと思います。そして、私のような人間がいると、だれもいないところで、静かに諭したり、諌めたりしていたのでしょう。
 
Tくんがいじめられなかったのは、M先生の細やかな配慮があったからだということに、今になって気づかされました。インクルーシブ教育などという言葉もなかった時代です。
 
M先生は、よく放課後、Tくんをひとり教室にのこして、洋服をあげたりもしていました。「これ、少し大きいかな」と洋服を広げてTくんの体にあてがっている姿を何度か見かけました。足し算や引き算を教えていたこともあります。両手の指を折って、左右の手をみながら、M先生の前で一生懸命に計算をし紙に書いていたTくんの姿。何十年もたっているのに、はっきりと思い出すことができます。
 
M先生は、Tくんをとても大事にしていました。弱いものを大事にする(配慮といってもいいかもしれません)のは当然、ということをM先生は身を持って教えてくれていたのでした。
 
今なら、生徒に洋服をあげたり、ひとり残して勉強を教えたりすることが問題になるのかもしれません。でも、M先生は、教師であるまえに、人としてそうせざるを得なかったのだと思います。
 

 

 

 

トビラコ店主

 

********************************

ウェブサイト以外でも発信しています。

【お知らせ】
ソトコト』7月号の特集「ウエルビーイング入門」でtobiracoが取り上げられました。
 
PriPriパレット』(世界文化社)にトビラコ店主の「ちょっとためしてみませんか!」連載中

Facebookはこちらから(日々、なんか発信しています)

LINE@はこちらから。イベントのお知らせなどもしております。

友だち追加

********************************

トビラコが編集した本

発達障害の子のためのすごい道具』(小学館)

発達障害 あんしん子育てガイド』(小学館)


********************************