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心の奥深いところを聴き出すのがカウンセラーの仕事と思われるかもしれません。でも、深いところを「聴き出す」ことで、心の中のドロドロしたものが出てきて、悪化することもあるそうです。
これは、わかる気がします。
自分の中のドロドロしたものを吐き出してスッキリするかと思いきや、むしろ話さなければよかったと暗い気持ちになることがあります。
「聴く」ことは、ほんとに難しいと思います。
カウンセラーの東畑開人さん著『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院 2019年)は、東畑さんがカウンセラーになりたての頃を振り返った本です。
カウンセラーの仕事がなく、ようやくありつけた職場は沖縄県。精神疾患のある人たちのためのデイケア施設です。
そこでのカウンセラーの仕事は、ただ「居る」だけだったのです。何もせずに居るのが「穀潰し」と思われている気がして、つらかった東畑さん。寄るべない気持ちでいるところに、施設利用者の女性から「話を聴いてほしい」と頼られます。
待ってました、これぞ自分の仕事とばかりに、密室で二人きりになって彼女の話をとことん聴きます。女性は虐待を受けた悲惨な過去を話し始めます。東畑さんは、彼女の悲惨で苦しい過去の話を数週間に渡って聴きました。
その結果どうなったのか。彼女はデイケアに来れなくなりました。
そこで、若かりし東畑さんは猛省します。
以下、長くなりますが、引用します。
おれは大バカだ。
なぜ彼女が僕に話を聴いてほしいと言ったのか。
それは彼女がデイケアに「いる」のがつらかったからだ。だから、彼女はセラピーもどきではあっても、何か「する」ことが欲しくて僕に相談を持ちかけたのだ。そうすることで、デイケアに踏みとどまろうとしていたのだ。
(中略)
僕も同じではないか。僕もまた「する」ことがなくて「いる」のがつらいから、セラピーもどきに逃げこんだ。そしてその結果、かろうじて安定を保っていた彼女の苦しさに気づかず、状態を悪化させてしまった。
(中略)
僕はあのとき、カウンセリングもどきなんかをするのではなく、二人でデイケアに「いる」べきだった。一緒に、退屈に、座っているべきだったのだ。座っているのがつらければ、せめてトランプをやるとか、散歩をするとか、何かしら一緒にいられることを探すべきだった。
ジュンコさんが求めていたのは、セラピーなんかじゃなくて、ケアだった。心を掘り下げることではなく、心のまわりをしっかり固めて安定させてほしかったのだ。
(中略)
「いる」のがつらいのは僕だけじゃない。「いる」のがつらくって、いろいろな声が聞こえてしまう人たちが、ここに集まってきているのだ。デイケアって、そういう場所なのだ。
ーー引用終わり。
『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(東畑開人著 医学書院)より。
このページを読んだだけで、胸がつかれる思いでした。
心を掘り下げることではなく、心の周りをしっかり固めて安定せてほしかったのだ。
この一文は、おそらく支援する人すべてが知っておくべきことではないかと思いました。心というものは、掘り下げていけばいくほど、底なし沼のように果てしなく深く掘り下げられるのかもしれません。でも、その前に、その人の心を安定させることが先で、必ずしも深く聴くことはないということです。
私たちは、ただそばに「いる」だけだと、何もしていないように思えて、つい「する」をしてしまいます。「する」ことで、何かをやった気になってしまうわけです。
トビラコ店主
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