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レストランでメニューを見ながら自分の食べるものを決めるのに20分かかった、という人の話を聞きました。
その人は、知的な障害がありますが、社会で十分に働く力がある人です。
一緒にいる支援者のAさんに「Aさんが(僕が食べるものを)決めてください」と言ったそうです。
でも、Aさんは、「決めるのはあなたです。僕が食べるのではないのですから」と返しました。で、「自分で決める」をしてもらったら、20分かかったのです。
その間、じっと待っていたAさんの姿勢もまた立派な支援ですよね。「何かしてあげる」のではなく「してあげない」支援です。
自分の食べるものを決めるのに20分かかったというその方は障害があるために、自己決定の機会が小さい頃から奪われていたそうです。食事ひとつにもしても、家族や支援者が「これにしなさい」と決めることが多く、黙ってそれに従う生活をしていくうちに、自己決定ということができなくなってしまったといいます。このようなケースは少なくないように思います。
選べないのではなく、選ぶ機会を奪われていた、とAさんはおっしゃっていました。
彼に、自分で選ぶ機会、決める機会を作っていくうちに自分から「あれが食べたい」と言えるようになったそうです。
「最良の選択ができないだろう」から、かわりに親や支援者が決めてしまうということになると、学ぶ機会も奪われてしまいます。
どんな人でも常に最良の選択ができるわけではありません。オーダーしたものがおいしくなかったとしたら、次からは別のものと頼んだり、別の店を選んだりしようと考えるようになります。
あるいは、高いお金を払っておいしくないものを食べるより、自分で作った方がいいと思うかもしれません。そのために料理を覚えようということに発展するかもしれません。
失敗も貴重な経験になるわけですが、選択の機会が奪われるということは学ぶ機会が奪われるということでもあります。
支援の目指しているところは、その人の自立であると考えれば、「何かをしてあげる」回数は減っていくようにも思います。
余談ですが、高齢者施設などは支援者が「何かしてあげる」と点数になるそうです。こうした制度も見直しが必要なんだと思いますが、「してあげない」は目に見えないし、目に見えないものに点数はつけられないということなんでしょうね。
トビラコ店主より
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