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2024.02.27

トビラコへようこそ

~店先で、ちょこっとおしゃべり~

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障害のある子にたくさんの財産を残さない方がいい理由は大きく2つあると思います。
 
1)子ども名義の財産(貯金、株、不動産など)は、法定後見人(司法書士や行政書士などの士業の人)が管理するようになると、子どものために使えなくなる。
 
解説が必要ですね。判断能力が不十分な成人(18歳以上)には、「成年後見人制度」という制度により法定後見人がその人の財産を守ります。ただし法定後見人はつけなければならないわけではありません。義務ではないのです。でも相続が発生した場合は、この限りではありません。

身内の誰かが亡くなり、わが子に相続が発生した場合、子どもに判断能力が不十分と判断されれば、否応なく法定後見人がつきます。一度ついた法定後見人は、一生涯にわたってその子の財産を管理し、親といえども法定後見人の許可なくして子ども名義の財産を触ることができなくなります。いくら子どものためであっても、法定後見人に「贅沢」といわれて不許可になる可能性があります。法定後見人の報酬は、その子の財産が1千万円未満でも月に2万円程度は発生。億単位になってしまうと10万円前後かかります。
 
法定後見人は、被後見人(この場合、子ども)の財産をなるべく減らさないようにするのが仕事ですから、そうならざるを得ないわけです。
 
なので、子ども名義の預貯金は最低限にしておいて、子どものために自由に使えるお金は親名義にしておいた方が賢明です。相続というと、親の亡きあとと思われるかもしれません。でも、生きているうちに身内の誰がかなくなって、突然発生することがあります。

自分(親)なきあとの財産については、遺言(法務省のホームページで「遺言」を検索)に残しておけばいいわけです。例えば、きょうだいや信頼できる誰かに託すとか、ですね。
 
もちろん、誰も信頼できる人がいなければ、法定後見人でも良いわけです。

 
2)財産があると、よからぬ人が寄ってくる。
 
判断能力が不十分だったり、騙されやすかったりする人間がたくさんの財産を持っていて、そのことが周りに知れるとあまりいいことはありません。
 
もともと、1)の法定後見人が財産を管理する「成年後見制度」は、認知症の高齢者の財産を守るための制度でした。高齢者の財産を狙う不心得者が多かったからです。この点は、「判断力不十分」という知的障害者も同じでしょう。身内であっても、です。
 
こんな話を聞いたことがあります。
 
知的障害のある40代の男性が、新宿のバーの呼び込みに誘われて、毎日通うようになり、1千万の預金がなくなってしまいました。男性は、毎日決まった時間に決まった道を通るので呼び込む方も心得たもので、その時間に誘うわけです。もし男性に払うお金がなければ、そんな目には合わなかったでしょう。
 
ただ、この話、バーだけを責められないと、私は思いました。もちろん、バーがやっていることはけしからんことです。でも、男性はバーをそれほど嫌っていなかったのではないかなと思うのです。おそらく、チヤホヤされたことでしょう。男性の話を聞いてくれたかもしれません。邪険に扱われるところだったら、男性はその道は通らなかったはずです。
 
もし、その男性に優しくしてくれる人や話を聞いてくれる仲間がいれば、当然バーの話になり、それはおかしいとなったかもしれません。

 
1)と2)を総合し、まとめると、残すべきは財産ではなく、子どもが安らげる居場所や仲間、コミュニティです。お金に頼るのではなく、どのような居場所を子どもに残し、どのような人たちがいる場所に子どもを託したいのか、そこが最も大事だと思います。
 
なお、金銭管理については、地域の福祉協議会(自治体のホームページ参照)に相談してみるといいと思います。市民後見人制度があり、金銭管理の他に役所からの複雑な書類の面倒なども見てくれます。報酬は、その人の支払い能力の応じてかなり低い(無料というところもあるらしいです)はずです。
 

人はつながりの中でしか生きられません(心理カウンセラーの東畑開人氏談)。どのような人や場所とつながって生きていってほしいか、そのための準備をしておくことが、財産を残すよりも大切だと思うのです。

 

 

 

トビラコ店主

 

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