トビラコへようこそ
~店先で、ちょこっとおしゃべり~
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「うちの塾でやっていることの半分は、おうちのお手伝いでできることよ」
名門小学校に子どもを次々に送り出していた、関西の小学校お受験塾の塾長の言葉です。10年以上前の話で、当時、私は教育雑誌の編集者でした。
なるほど、その塾では「お買い物ごっこ」「簡単なおやつづくり」「洗濯ハサミを使った遊び」などがプログラムに組み込まれていました。もちろん、いかにもお受験対策はやっていましたが、プリントの成績は優秀でも、生活体験のない子が問題になっていた時代です。足し算、引き算はできても、季節の野菜の名前を知らないという子が結構いました。
今はどうか知りませんが、当時は、小学校受験の面接で聞かれることのひとつに「あなたのおうちのおでんの材料をできるだけたくさん教えて」がありました。
それを知ったお受験ママたちが、毎日のようにおでんを作って材料を子どもに言わせていたという、笑えない笑い話(実話)まであったのです。
普段からおでんを子どもと食べて、おでんの中身が食卓の話題になっていればいいことですし、おでん作りのお手伝いをしていれば自然に答えられる質問です。
子どもたちの習い事の多さを嘆く放デイ運営者の話を聞いて、ふと小学校お受験塾のことを思い出しました。
家でできることを、わざわざお金を出して高い療育を受けている子の話は、当時の小学校お受験塾に似ています。
療育がいけないといっているわけではなく、家庭でできることをやらせずに療育だけに頼るのはどうなのかしらという話。お手伝いの中には療育に通じることがたくさんあります。
毎日のように別々の療育に通っている子がいるそうですが、子どもが疲れてしまわないでしょうか。
大人は、意外と子どもの疲れに鈍感なところがある気がします。
これも、編集者時代の話になります。私は、当時ママたちに人気のあった先生との誌上親子面談の連載を担当していました。毎月、いろいろな親子やご家庭の教育方針を知ることになり、とても勉強になった連載です。
小学3年生の男の子とご両親の面談は、今でもよく覚えています。男の子は、学校の成績は良いのですが、テストのケアレスミが多いとお母さんは心配され、先生に相談しました。
先生が聞き取ったところ、男の子は週6日、習い事と塾でスケジュールが埋め尽くされていたことがわかりました。母親は「週7日、習い事に通っている子もいますよ」と話しましたが、この過密スケジュールに驚愕した先生は、開口一番「お子さんは疲れています」と言いました。疲れているから、テストに集中できずにミスをしてしまうのだとのこと。
続けて先生は「このままではゴムが伸び切ったようになります。習い事の日をせめて半分に減らしてください」とアドバイスしました。先生はお父さんに向かって「お父さん、会社が終わってから、週に6日、別の場所で仕事したら疲れるでしょ。お子さんも同じです」と話しました。
とても穏やかなご夫婦で、先生の話をメモしながら熱心に聞いていました。その後、習い事を減らしたかどうかは知りません。
後日談になりますが、連載は面談で終わりではなく、面談者の自宅に伺って子どもの部屋を撮影して掲載します。習い事週6日の男の子の家に伺いました。決して広くはないリビングを占拠していたのは大きなピアノでした。ピアノの前で男の子を撮影して掲載したのは、母親の強い希望があったからです。掲載誌をおじいちゃんに見せたいと話していました。
ご両親ともに高卒で、子どもにはいい大学に入ってほしいという話も聞いていました。週6日の習い事と塾、リビングを占拠する大きなピアノは「親の願い」の象徴です。
親の願いや思いは、子どもにとっても大きな負担になることがあります。将来のことも大事ですが、今、目の前にいる子どもが疲れていないかどうか。そこも大事ではないでしょうか。とりわけ、発達障害の子はそうでない子に比べて「疲れやすい」ということも心に留めておきたいですよね。
トビラコ店主
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