トビラコへようこそ
~店先で、ちょこっとおしゃべり~
お試しいただける商品をまとめました、こちらです。
——————————–
31歳でディスレクシアに気づいた人の話が、昨日の毎日新聞の夕刊に掲載されていました。
亀田和利さんという方で現在は56歳。札幌で整形外科医として開業という異色の経歴の持ち主です。後述しますが、亀田さんはある特訓で文章を理解できるようになります。
「勉強ができない」のではなく「読み書き困難」だったのに気づかれなかった人たちの多くは、現在、40歳以降でしょう。この年代で「読み書き困難」であることが「発見」された人は、亀田さんのように運がいい人です。たいていは、知的障害者と見られたり、職を転々としたりすることがほとんどではないでしょうか。
山田洋次監督の映画「学校」は、いろいろな事情で学校に通えなかった人たちが通う「夜間学校」が舞台です。映画の教師のモデルになった(と聞いています)、松崎運之助(みちのすけ)さんのエッセイに読み書きができない男性が出てきます。実在した人だと思います。
その人は、工事現場の仕事をしていました。昼休みになると、スポーツ新聞を広げて仕事仲間たちがワイワイと昨日の野球の結果を話しています。文字を読めないことを薄々知っている同僚が、男性に「この記事おもしろいから読んでみろよ」と新聞を渡そうとします。すると男性は「トイレに行ってくるから、後にする」とその場を離れます。
男性は、離れて何をするのかというと、誰もいないところでシャドウボクシングをしているのでした。胸痛む場面です。
おそらく、彼はディスレクシアだったのでしょう。でも50年近く前の話です。ディスレクシなんて教師だって知らなかった時代です。松崎さんはエッセイで、ディスレクシアには触れておらず、彼の家が貧しくて学校に通えなかったという話になっていたと思います。エッセー自体20年以上前に書かれていますから、松崎さん自身もディスレクシアをご存知なかったと思います。
私もエッセイを読んだ当時はディスレクシアを知りませんでした。でも、ディスレクシアを知ってから、松崎さんのエッセイが思い起こされたのです。ああ、シャドウボクシングをしていた男性はディスレクシアだったに違いないと。そして、ディスレクシアの人の不遇さを垣間見た思いがしました。
ディスレクシアを含む「読み書き困難」が知られるようになって本当に良かったと思います。ちなみに、読字障害はディスレクシア、書字障害はディスグラフィアです。
次のステップは、読み書き困難の子(人)の「困難」をどのようにして「困難」でなくするかですよね。
冒頭、記事に出てくる亀田さんは、家庭教師や塾の先生の助けを得ながら勉強し、31歳にして自分がディスレクシアであることを知ります。そして、1日2~3冊の速読を「看板を読むように」と人にすすめられ、100日間こなして、文章を理解できるようになりました。
一般に、反復や特訓はよくないと言われています。でも、亀田さんを見ていると一概に反復や特訓がダメとはいえません。思い込みを取り払って、その子(人)にあった学習法を見つけることが大事。読み書き困難が認知されるようになった今、ひとりひとりにあった学習法を習得するステップに入っていると思います。
トビラコ店主
********************************
すきなのどっち? きもち・つたえる・ボード トライゲーム やってみたいのはどっち?を考案した佐藤義竹先生の『自信を育てる 発達障害の子のためのできる道具』(小学館)、好評発売中!
小学館子育てサイトHugKumに佐藤義竹先生のインタビュー記事が掲載されました。
発達障害の子どもたちの「苦手」や「できない」が私を成長させてくれた。子どもを診断名でラベリングしないで!【筑波大学附属特別支援学校・佐藤義竹先生】
発達障害の子の「できる」を引き出す学習道具ベスト5 筑波大学附属特別支援学校の先生が教えます!
Xはこちらから
Facebookはこちら
LINE@はこちらから。イベントのお知らせなどもしております。