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「トレーニング」ということばは、発達障害界隈ではあまりよいイメージで使われていないように思います。
でも問題はトレーニングの中身ですよね。
その子に苦痛を与えるトレーニングは、よくないトレーニングでしょう。
聴覚過敏の子に、トレーニングと称して苦手な音を聞かせても音に慣れるようにはならず、なにも得るところはありません。
花粉症の人にスギ花粉が舞うスギ林に身を置いても慣れることはない。この秀逸なたとえ話を聞かせてくれたのは、作業療法士の木村順さんです。
では、良いトレーニングとはどのようなものでしょうか。
日本で唯一の治療的里親として活動している、土井高徳さんの話がとても参考になります。
土井さんは、親からも養護施設からも見放された子どもたちを受け入れて育てています。預けられる(送り込まれる)子どものなかには発達障害の子が少なくありません。
発達障害ゆえの困難を理解されず、支援も受けられないまま自尊感情が著しく低下してしまった子どもたちです。そのような子どもたちに必要なことを次のように挙げています。
ある文庫本の解説文です。ちょっと長いのですが、引用します。
(前略)
こうした子どもが抱える困難を暮らしの中で観察し、その特性を理解し、環境を整えること、特に刺激を減らす配慮をし、見通しのよい毎日のスケジュールにすることで、子どもは際立って落ち着いてくる。
大事なことは、日々の暮らしの中で子どものトレーニングを行うことである。様々な工夫を暮らしの要素に溶け込ませておくことである。子どもに家事のお手伝いをさせることによって、「ありがとう」「たすかったよ」「じょうずになったね」という魔法の言葉を繰り返しかけることで自尊感情が高まる。食後の何気ない会話の時間をもつことで、興味のある「へび」の話しかしなかった子どもが異なる分野の話題を提供するようになる。
(引用終わり)
土井さんが解説を寄せた文庫本とは、『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』(クリスティン・バーネット著 角川文庫 2018)です。
本書は、IQ189の天才にして重度の自閉症ジェイクの話です。ジェイクはできることとできないことが極端に凸凹で、療育の専門家たちから「見込みなし」とされていました。土井さんのところの「見込みなし」として送り込まれる発達障害の子に共通しています。
でも、母親のクリスティン・バーネットはジェイクが夢中になれることに着目して、ジェイクの才能を「発見」します。それだけではありません。「見込みなし」とされた自閉症の子どもたちのための療育の場を作ります。
そこをジェイクが社会性を育む場として、日常的にトレーニングを忍ばせる工夫をしました。ジェイクに本を読むのを中断させて子どもたちにおもちゃや、スコップ、バケツを渡すように頼み、孤独な時間をなるべく作らないようにしたのです。社会性を育むトレーニングでもあります。
土井さんがお手伝いを子どもにお手伝いをトレーニングとして、日常生活の一環に組み込んでいるのととてもよく似ています。
トレーニングというと、道具を使って「何かしている(させている)」景色をイメージしがちですが、それだけがトレーニングではありません。良きトレーニングは、その子を良い方向に向かわせることなんだと、本書と解説を読んでとても納得した次第です。
トビラコ店主
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トビラコ店主が小学館子育てサイトHugKumに執筆しました。
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