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『新増補版 一緒がいいなら なぜ分けた 特殊学級の中から』(北村小夜著 現代書館 2025)は、1987年に出版された本ですが、加筆されて2025年に新増補版として出されました。
1987年は、特別支援学級が「特殊学級」、特別支援学校が「養護学校」と呼ばれていた時代です。著者の北村小夜さんは「特殊学級」で21年余り教えてきた教師でありながら、一貫して「(障害のある子とない子を)分けない教育」、今でいうインクルーシブ教育を訴え続けてきました。100歳(!)の今でもその主張は変わらず、だからこそ新増補版を出版されたのでしょう。
身も蓋もない言い方をすると、北村さんの教師時代、文部省(当時)は、障害のある子が普通学級にいられると授業の妨げになると考えていました。そこで特殊学級や養護学校をたくさん設置し、障害のある子を送り込むことをしていたのでした。学校も文部省の指針に従って、「障害児探し」(「障害児狩」とも呼ばれていた)をし、普通学級のIQの低い子や境界知能(当時はそのことばも認識もなしですが)の保護者を説得して特殊学級や養護学校に送り込んでいました。
「ほんとはここ(特殊学級)に来たくなかった、分けられた子」たちの声に北村さんは耳を傾け、記録として残したのが本書です。
「一緒がいいならなぜ分けた」という秀逸なタイトル。これは、行事の時だけ「同じ学校だから」と普通級の子と「交流」させられる特殊学級の子どもが北村さんに問いかけたことばです。「交流」の欺瞞をみごとに言い当てています。
私も「交流」は、大人の自己満足ではないかと考えるひとりです。毎日同じ教室で学んでこそ互いに見えてくるものがあるはずで、行事の時だけの「交流」で障害のある子をわかったつもりにならないでほしいとも思いますね。
北村さんの時代から40年。インクルーシブ教育の必要性が叫ばれるのと逆行するように、特別支援学級への希望者が増えて、学校によっては教室の設置が間に合わなかったりします。特別支援学級は定員8名と決められているため、希望者が9人以上だと新たに教室を作らなければなりません。このため、支援を受けたくても教室不足のため受けられず、通常級に籍を置かざるを得ないという、40年前とは逆の現象が起きています。
これはひとつには、40年前とは比べものならないくらい、特別支援教育のレベルが上がってきているからです。日本の特別支援学校に東南アジアの国の校長先生が視察に来るほどです。また、支援が手厚く就職率の高い有名な支援学校への入学はものすごい倍率です。
特別支援学級や特別支援学校は大きく変わっているのに、変わらないのは通常級です。北村さんが本書で述べたかったのは、障害のある子とない子がともに学べる通常級です。でも、40年経ても通常級は40人近くの子が一斉に同じことを同じ進度で学ぶ授業、ついて来れない子は振り落とされるという構図は変わりません。
だとしたら、一人ひとりの子に目が行き届き、その子にあった教え方をしてくれて、なおかつ障害のある子が苦手とするコミュニケーションの課題にまで踏み込んで支援してくれる特別支援学級がいいとなるのは自然な流れではないでしょうか。
北村さんの主張する「分けない教育」は、正論かもしれません。でも今の時代には、即さない部分もあるなというのが正直な感想でした。
ただ、障害のある子の気持ちを汲み、どこまでも寄り添える北村さんの活動には心底感服します。と同時に北村さんだからできたではダメなんで、障害のある子がどこの学校に入ろうとも同じように尊重されるべきなんですよね。北村さんに出会えなかったたくさんの子どもたちのためにも、やはり合理的配慮のような「制度」が必要ではなのかなと思いました。
トビラコ店主
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トビラコ店主が小学館子育てサイトHugKumに執筆しました。
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