トビラコへようこそ
~店先で、ちょこっとおしゃべり~
お試しいただける商品をまとめました、こちらです。療育施設、園、クリニック等の法人様専用の商品は、こちらもご覧ください。

ここから先は、トビラコ店主の店先おしゃべりです。
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私は「教えられ体質」だ。
見知らぬ人から「富士山が見えるよ」と教えられたことがある。
しかも、一度ではない。三度もだ。
二度は新幹線の中だった。
うとうとしていたら、隣に座っていたおじさんが私の膝を軽く叩いて、
「富士山が見えるよ」
と教えてくれた。
窓の外を見ると、まるで絵葉書をそのまま大きくしたような見事な富士山が目に飛び込んできた。
別の日にも、同じようなことがあった。
やはり新幹線でうとうとしていたら、「富士山が見えるよ」と声をかけてもらった。
もう一度は、買い物帰りの夕暮れだった。
線路の上を渡る陸橋を歩いていると、見知らぬおじさんが、
「富士山が見えるよ」
と言う。
「え?」
と思って陸橋の向こうを見ると、夕日に染まったオレンジ色の富士山が見えた。
思わずスマホを取り出して撮影したほど、胸を打たれる景色だった。
富士山ではないが、こんなこともあった。
満開の桜が散り始めたころ、川を見下ろせる駅のホームに降り立った。
目黒川には桜の花びらが一面に浮かび、ゆらゆらと流れていた。
すると近くにいたお婆さんが、
「あれを花筏っていうの」
と教えてくれた。
「花筏」という言葉は、和菓子の名前で見たことがあるくらいだった。
「あ、本当に筏みたいですね」
そう言って、お婆さんとしばらく並んで川面を眺めた。
なぜ私は、こんなに「教えられ体質」なのだろう。
考えてみると、編集者時代が関係しているのかもしれない。
取材では、わからないことを次々に聞く。
すると相手は、
「それはね」
と身を乗り出して教えてくれる。
私は、自分の知らないことを教えてもらうのが大好きだった。
取材から帰ると、その日聞いた面白い話を家で夢中になってしゃべっていたくらいだ。
そんな毎日を続けていたら、いつの間にか「教えてください」という光線を身体中から出すようになったのかもしれない。
そして、その光線をキャッチした人が、
「富士山が見えるよ」
「それを花筏っていうの」
と教えてくれる。
教えられ体質の人は、少し得をする。
ぼんやり歩いていたら見逃していたかもしれない富士山も、花筏も、誰かのおかげで出会うことができたのだから。
トビラコ店主
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