トビラコへようこそ
~店先で、ちょこっとおしゃべり~
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そろばんの達人の頭の中には、透明のそろばんが入っているらしい。
頭の中の透明なそろばんが動いて、答えを出すそうだ。
長年そろばん塾を営んでいる塾長が言うのだから、間違いない。
塾長は、7回もそろばん日本一になっている。彼の頭の中のそろばんは、電卓並み。
数字が何兆になっても、頭の中のそろばんが計算してくれる。
頭の中に透明のそろばんが入るようになるまでには、かなり練習をするという。
そして、教え子たちを見ていると、「あ、この子、透明のそろばんが頭に入った」とわかるらしい。
そろばんは、数を見える化してくれる道具だ。その道具が、頭の中に入っている。
つまり、暗算ができるのは答えを暗記しているからではなく、頭の中で数を見える化しているからなのだ。
たいていの人は、そろばんのような立派な道具は頭の中に入っていないけれど、簡単な計算を暗算できるのは、頭の中で数字を操作しているからだと思う。
数が増えたり減ったりするのを、頭の中でイメージしている。
たとえば、8+5。
8を10にするために、5から2をもらう。
5は3になり、8は10になる。だから答えは13。
かなり雑な説明だが、こんな具合に数字を行ったり来たりさせて、答えを出す。
ところが、数をイメージすることが難しいと、暗算だけではなく、計算そのものにつまずいてしまうことがある。
数字の組み合わせを暗記する前に、数を見える化することが大事なのだ。
特別支援学級で教えている先生からも、数を具体的にイメージする経験が十分でないまま計算に進むと、つまずきやすいという話を聞いたことがある。
そういえば、同じく特別支援学級で教えている井上賞子先生も、「たっぷり、ていねいに」がキーワードだ。
頭の中に透明のそろばんを入れるためには、小さい頃からそろばんに触れていることが大事なんだとか。
大人になってからでは、なかなか透明のそろばんが入らないらしい。
大人の頭が固いからなのかと思っていたが、もしかしたら、大人になると「たっぷり」の時間を取れなくなることとも関係しているのかもしれない。
さて、見える化といえば、思い出すことがある。
私は編集者時代に、繰り上がり、繰り下がりの仕組みを見える化しようと、漫画家に漫画を依頼したことがある。
すると、漫画家は見える化するだけではなく、そこに物語までつけてきた。
たとえば、132-98という引き算。
一の位同士では引けないので、十の位から借りてくる、というくだり。
おじいさん「10の部屋から借りてきたのに、返さないのかい」
おばあさん「ひどい話だね」
となってしまった。
いやいや、借金の話ではないんだけど。
かえってわかりにくくなってしまった。
見える化というのは、人によってずいぶん違うものなんだなと。
思いがけない変化球を投げられて、こちらの頭がこんがらがった記憶がある。
見える化のためになる話をしようとしたら、思い切りそれて、ためにならない話で終わってしまいました。
申し訳ございませんでした。
トビラコ店主
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