大学病院の外科医からスタートし、救急救命医療を経て、得た結論は、単に体を「修理」するだけではなく、その人がその先に再び病気にならない予防医療が必要ということ。それがアロマオイルを使った補完医療につながります。
 
 
 

発達障害の子にアロマという安心を

4回目


「西洋医療」と「補完代替医療」のコラボレーション。

 

今回のお話のポイント

●朱さんが統合医療で診療するようになったきっかけ。

●体の故障部を「修理」するだけではなく、なぜ故障したかを考える医療も。

●医療の世界ではホスピスや在宅医療にアロマが使われるようになってきた。
 
 

 
「体の修理屋だけでよいのか」という疑問。
 
 

江頭

朱先生のクリニックは「統合医療」をなさっていますが、そもそも統合医療とはどういうものですか?

僕は10年以上、外科医や救命救急の仕事を続けてきて、たくさんの命を救いました。しかし、そんな中で少しずつ疑問をもつようになったのです。
 
命は助かった。だけど、重い障害が残り家族のサポートがないと生きられない人、会話もできず寝たきりになる人、また、精神疾患を患っているけど外科的な治療は終わったから退院させるしかない人、再発をくりかえす人‥‥。
 
そんな最悪な状況に陥らないために、医療としてもっとやれることがあるのではないかと思い始めたのです。

 
 

 
 

江頭

最近でこそ「予防医学」の大切さが訴えられていますが、やはり、お医者さんは具合が悪い人、病気の人を治療するというイメージですね。

実際、西洋医学とはそういうものでしょうね。病気が発覚したら専門診療科で故障している「部分」の治療をする。治療の主役は、できれば飲みたくない薬が多く、薬を使ったとしても治らないケースも少なくない。検査をして何もなかったら様子を見ましょうとなる。

 
 

 
 

西洋医療、東洋医療のいいところを取り入れる。
 

江頭

患者が「調子が悪い」「ここが痛い」と訴えても、特に検査で異常がでなかったら、「自律神経失調症ですね」といわれて心療内科をすすめられたり。

そうなんですよね。そんな頃に、統合医療の概念を持つ医師と出会いました。
 
その先生は学生の頃ラグビーをやっていて、足首を痛めて整形外科に数カ所通ったが痛みがとれない。そこで父親の勧めで鍼灸を受けているうちに痛みがとれた。保険診療の西洋医学だけでは限界があると、アメリカアリゾナ大学の統合医療プログラムに研修に行った方でした。

江頭

気功や鍼灸、漢方など、東洋医学で調子がよくなる例はよく聞きますね。

私の育った実家では小さいころから兄が病気がちで、両親は漢方薬やスッポンの血を飲ませたりしていました。そこで、私もクリニック開設前の2年間、補完医療について学びました。
 そして感じたことは、本来すべき治療が置き去りにされているのではないか、ということです。
 
西洋医学は狭窄した血管にステント入れるとか、腫瘍を切除したり、抗がん剤でがんをたたいたりします。でも本当に大事な事は血管がつまったり、発がんしないことではないかと、思うようになったのです。
 
もちろん、西洋医療にもいいところはあります。西洋医療であろうと東洋医療であろうといいものは認めよう!いいものをどんどん取り入れて統合し、根本治療まで考える。そして始まったのが統合医療「朱クリニック」です。

 
 

 
 

その人の10年、20年先を考えた診療をめざす。

 

江頭

朱先生のクリニックでは、統合医療として、どのような治療をされているのでしょうか?

地域の人たちは私が外科出身という認識から、はじめは「この痛いのを何とかしてほしい」という人から始まり、治療が見通せない慢性疾患、たとえばアトピー、喘息、リウマチなどで悩む方々がやってきました。
 
他の整形外科に通っても治らないからここに来る、という人が開院当初ほとんどでした。そういう人には必要に応じて、鍼灸や漢方、そして温熱療法などを行いました。これらは「補完代替医療」といわれるもので、西洋医療を補完するという意味ですが、私は、西洋医療も東洋医療を含めた補完医療もどちらも医療に欠かせない大事なものとして「統合医療」といっています。
 
薬というのは、抗菌剤などは殺菌という目的で有益ですが、他の場合は症状を抑えてコントロールする対症療法で使われている場合が多く、根本的治療になっていないケースが多い。
 
ところが、「補完代替医療」を行うことで痛みが軽減し元気になったり、肌トラブルが治ったり、腫れがひいたり、歪みが矯正されて機能が正常化し症状が改善されたりして、たくさんの事例を見てきて、「統合医療」の素晴らしさを確信していきました。

 
 

 
 

江頭

病気が治るだけでなく、その人が快適に生きやすくなるようになるように、治療方針をたててもらえるということですか?

方針というのは、その人のことを考えることです。対症療法で済ますのではなく、その人の今までの習慣を見直し、10年、20年先の健康生活を考えるという発想が、私のベースになっています。

江頭

アロマセラピーはどのように取り入れていらっしゃるのですか?

アロマセラピーは芳香療法であり精油成分のもつ効果と、マッサージで得られる「手当て」療法の相乗効果をもたらすものなのです。
 
医療の世界でもホスピスなどで心も体も苦痛な患者さんが、残された日々を有意義に過ごせるようにと、アロマが使われています。
 
アロママッサージでむくみやだるさがよくなり、眠れるようになって気分が晴れる。その結果痛みも軽減することがよくあります。

 
 

 
 
続く。
 

1回目 緊張した脳と体をほぐす。それだけで変化があらわれます。

2回目 マッサージで落ち着く。

3回目 マッサージで深まる親子の絆。

5回目 自立のためのアロマオイル。

統合医療「朱クリニック」院長/日本アロマセラピー学会認定医/日本外科学会認定医/日本消化器外科学会認定医/日本救急医学会認定医
朱永真

しゅ・えいしん

1982年 日本大学医学部卒業後、同大学医学部第一外科入局。1992年から5年間、日本大学板橋病院救命救急センター勤務。1999年西洋医学と補完代替医療を統合した医療をめざす朱クリニックを開院。2005年 「オリエンタル・アロマセラピィ・カレッジ」開校、講師、理事長兼任。統合医療の観点から発達障害の子どもたちに精油を使った「メディカル・アロマセラピィ」実践し成果を上げている。

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編集者・ライター
取材/構成/文 江頭恵子

発達障害をテーマにした書籍が多い。
「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」(栗原類著 KADOKAWA)「15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ」(岩野響著 KADOKAWA)「育てにくい子にはわけがある」(木村順著 大月書店)「これでわかる 自閉症とアスペルガー症候群」(田中康雄・木村順監修 成美堂出版)「これでわかる 「気になる子」の育てかた」(木村順監修 成美堂出版)「発達障害の子を理解して上手に育てる本 幼児期編」(木村順監修 小学館)「「小学校で困ることを」を減らす親子遊び10」(木村順監修 小学館)「発達が気になる子の「できる」を増やすからだ遊び」(笹田哲監修 小学館)「発達支援実践講座 支援ハウツーの編み出し方」(木村順著 学苑社)「なんだかうまくいかないのは女性の発達障害かもしれません」(星野仁彦 PHP研究所)「発達障害に気づかない母親たち」(星野仁彦 PHP研究所)「4歳までの「ことば」を育てる語りかけ育児」(中川信子著 PHP研究所)「子どもの発達に合わせたお母さんの語りかけ」(中川信子著 PHP研究所)「子育てのモヤモヤ・ウツウツが晴れる本~こころがラクになる考え方」(中川信子 伊藤郁子 花山美奈子 共著 PHP研究所)

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