子どもの特性を担任に理解してもらうために「大人な対応」が必要になってくることがあります。こちらの言い分がいくら正しくても、担任の無理解を批判するだけでは聞いてもらえないでしょう。作業療法士の木村順さんは、ポジティブなことをいうポジティブクレーマーになることをすすめます。クレーマーはクレーマーでもポジティブクレーマーって?
 
 

木村順さんにきく 学校の先生とのつきあい方 後編

ポジティブ・クレーマーになろう

障害の分かりにくさが周囲の無理解につながる

 

「知的な遅れがない」というのが発達障害の理解されにくい理由の一つでもあります。テストではかなり良い点をとったりします。そのため、周囲には「ちゃんとお勉強はできるのに、友達と仲良くできない」、「知能指数は高いのに、じっとできなくて席を立ち歩く」「特定の教科だけ、極端に理解力がない」などと捉えられます。そのため、本人が怠けている、ふざけている、人の言うことを聞かないと誤解されることが多いのです。
 
発達障害は先天的に脳機能の偏りがあります。「人の気持ちがわからない」「じっとできない」「大きな音を嫌う」「体の使い方が不器用」などの様子は、脳の育ちにバランスの悪さがあり、感覚情報の整理がうまくできないことから生じます。バランスを良くするため、対症療法的に配慮や訓練をすることはできます。でも、病気を治療するように、完治できるものとは少し違います。障害は、それを抱えもちながら、うまく付き合って生きていくことも必要です。
 
目が見えない人には点字や盲導犬、耳が聞こえない人には手話、足が不自由な人には車椅子などがあるように、発達障害のある人には周囲の理解が必要です。障害の分かりにくさから、「周囲の理解」を得にくいのが、発達障害のある子をもつ親の一番の悩みかもしれません。
 
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はじめにお礼状を出して、あとからお願い状にする

 

先生には、わが子の「発達の凸凹」について理解してほしいものです。しかし、わかってほしい気持ちが先走ると、とかく先生の理解のなさを批判するばかりになりがちです。「こうしてください」「これはしないでください」「なんでわからないの?」が続くと、いわゆる「モンスターペアレント」のレッテルを貼られ、シャットアウトされかねません。ならばお願い事は後回しにして、はじめに学校にお礼状を出しましょう。

 
たとえば「子ども同士のケンカを、こんな風に仲裁してくれて、ありがとうございます」「おかげさまで友達関係がうまくいきました」「宿題に子どもの学習意欲をかきたてる工夫があって助かりました」など、できてあたり前ではなく先生のいい指導を取り上げてお礼の言葉にしてみませんか。
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合わせて、校長や教育委員会にもお礼状を出します。お礼は口頭では消えてしまうので、文書にすることが秘訣です。顔を合わせて「ありがとう」も大事ですが、お礼状にして後に残すのがポイントです。
現在の学校では、多くの場合、クレームは保護者が納得するまで言わせて、決して否定しない。うなづいて、言うだけ言ってもらって、保護者からの提案を待ち、それには学校の限界があると説得に入るという流れです。多くのクレームは受け流されるだけです。
 
「今日もまた◯◯さんから、おほめの手紙が届いた」となると、学校側はその保護者を、学校のことをよくわかってくれる『理解者』だと思います。その『理解者』から、「ところで、クラスでの対応について、気になる点がある」と意見があると、学校側も「なんでしょう?」と耳を傾けてくれるでしょう。
日頃からポジティブな評価ができる保護者から出るクレームに対しては、本気になってくれるわけです。子どもを「ほめて育てる」ように、わが子のために、ポジティブ・クレーマーになってみませんか。
 
<メールいただきました>

●学校の配慮で効果があったことは伝えてます

2017.7.16

わたしはどちらかというとポジティブクレーマーかも。むすこはディスレクシア、ディスグラフィアですが。こんな配慮によってこれだけ学習意欲があがった。こんなやり方をしたらこんな効果があったから試してほしい。効果があるものを伝えています。
つねに「チーム息子」になるよう一緒に考えてもらいます。一方的にはお願いしません。学校が配慮してくれたら効果をかならずはなします。向こうが困ったら具体的にその困り感は息子の特性のどの部分の影響が大きいのか作業療法士や臨床心理士のアドバイスを伝えます。先生ひとりに重荷をおしつけません。チームのひとりになっていただきます。
たくさん配慮して伸びたことたくさんあります。そののびを再び親の方から提案感謝をしてます。するとチームなのであちらからも提案が出てきます。ポジティブクレーマーよりチームに巻き込むことがいいようにおもってます。(中嶋幸子)

 
  ●この方法、かなりの確率で学校生活が好転します

2017.7.10

木村先生には10年以上たくさんの親子がお世話になっています。
学校、教師とのお付き合いに関してもたくさんアドバイスをいただいています。この方法、かなりの確率で子どもの学校生活が好転します。教師も人の子、お礼を言われたり、認められる一言で心が開く事も。もちろん、たまに異常と思える頑なな方もいます。(その場合は全面戦争になりますが。)
親や子どもに近い大人がその子の良いところをたくさん探し、認め第三者に伝えるためにポジティブに言語化することで、否定的な言葉を綴る教師の言葉をポジティブな表現に置き換え伝える事が出来き、教師の気づきになるので。ある意味教師の助けになるのかもしれません。
また書くことで親自身の考えもまとまるので(書くことって実は自問自答したりしてなかなか大変)何を伝えなくてはならないかを明確化できます。
ポジティブクレーマーになることは子どもの学校生活環境改善のために有効なひとつの方法です。(T・J)
 

木村順さんにきく 学校の先生とのつきあい方 前編 うちの子紹介カードを作ろう

 


この記事は、子育て雑誌『edu』(小学館、2016.3月号で休刊)の別冊『発達障害の子の子育て応援BOOK』(2015年発売)に掲載されたものです。
 
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取材・構成・文/ 江頭恵子  撮影/tobiraco

作業療法士。発達障害臨床研究会・発達療育実践研究会代表
木村 順さん

作業療法士。発達障害臨床研究会・発達療育実践研究会代表。東京都足立区「うめだ・あけぼの学園」で臨床経験を積んだのち、2005年「療育塾ドリームタイム」を立ち上げ発達につまずきのある子の保護者の相談や療育アドバイスを行う。著書に「育てにくい子にはわけがある」(大月書店)、『発達障害の子を理解して上手に育てる本』(小学館)、『発達支援実践塾ー聞けばわかる発達方程式』(学苑社)など書著多数。LDサポート・療育ソラアル(東京・亀有)の療育スーパーバイザーを務める。

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