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言葉にできないストレスを数値化する肌着

2017.07.07

 
道具で発達を応援するtobiracoが前々からご紹介したかった道具のレポート、2回目は肌着です。肌着メーカーの老舗グンゼは、着用するだけで心拍、心電、体表温などを測定できる肌着を開発しました。文字通りウェアラブル。

発達障害のある子(人)のストレスは、障害のない子に比べて何倍も強いといわれています。一般的になんでもなくできることに困難を感じ、それがストレスになることがあります。例えば聴覚過敏であれば、他の人がなんでもない音が神経に触りストレスとなります。それを周りにどう伝えるかが、理解してもらうためのカギになります。

ストレスや緊張は心拍数や筋肉の緊張状態にあらわれます。それらを数値化することができれば、客観的に伝えることができます。理解も得やすくなるでしょう。また自分自身を客観的に見る手がかりにもなると、発達障害の当事者の方は話していました。

なお、今回、とり上げた道具も前回に続き、福祉工学カフェ(国立障害者リハビリテーションセンター研究所と新エネルギー・産業技術総合開発機構共催)で昨年7月に開催された「発達障害当事者のセルフモニタリング支援のためのウェアラブル機器〜感覚過敏の定量化と自律神経系に影響を与える要因の探索〜」で紹介されたものです。実際に発達障害の当事者が着けてその感想を発表しました。
 
 
心拍、心電、体表温などを測定

着るだけで、心拍、心電、体表温が測定できる肌着とは、一体どのような仕組みなのでしょうか。下の写真をご覧ください。

胸の部分に心拍、心電などの測定ディバイスが組み込まれています。オレンジ色のコードはディバイスとバッテリーをつなぐ配線。

胸の部分に心拍、心電などの測定ディバイスが組み込まれています。オレンジ色のコードはディバイスとバッテリーをつなぐ配線。

 

タンクトップのような形をした肌着の裏地に電極部分があり、その電極部分が肌に触れることで測定できるのです。電極部分といってもシート状になっており、布地と一体化しています。腰の部分には機器とバッテリーを収納できるポケットがついています。

肌着ですから24時間着けていることが可能です。長時間着ていても快適な素材が使われていますし、部分着圧のある生地と着圧フリーの生地が織り合わさっており、グンゼの技術力によって着心地が良いものとなっています。

発達障害の当事者の方に試用した感想を聞いてみると、
「心拍数を計測することができるので、自分が緊張状態であるのかどうかが簡単に把握できますね」とのことでした。
発達障害の人の中には、自分がいま緊張しているのかどうかの状態を自覚することが苦手な人がいます。また、不安を感じやすくて常に緊張している人もいます。この機器によって、自分が緊張していることを自覚できたら、そこからリラックスすることを考えることもできますね。
グンゼのこの製品は現在開発中で、今後一般に販売する可能性もあるそうです。多くの人が常に簡単に自分の状態をモニタリングできるようになったらよいですよね。
 
 

スポーツで使用している例。

スポーツで使用している例。

 

 

心拍、筋肉の活動の測定で「過緊張」や「低緊張」の数値化を

ストレスを数値化する動きは、作業療法士の間からも出ています。広島大学の講師で作業療法士の車谷洋先生は、筋肉の活動がわかるセンサーを開発中。それをウェアラブル化したらどのようなことが期待できるのかを発表しました。

この機器では、体の疲労や、筋肉の緊張状態の測定が可能とのことです。
これを発達障害の支援にどう結びつけることができるのかを考えると、「過緊張」や「低緊張」の測定ができないだろうか、という意見が当事者の方々から出ていました。

発達障害の子どものなかには、体幹の筋肉が弱かったり、筋緊張の調節がうまくいかなかったりする子がいます。
姿勢が悪い、歩き方がなんだか不自然、椅子にちゃんと座っているのが難しくてずり落ちてしまう、なんだかふにゃふにゃとしている。そんな子どもは「過緊張」「低緊張」の問題を抱えているかもしれません。
そういった問題の測定も将来的にはこの機器で可能になるかもしれない、と車谷先生は考えています。

広島大学講師/作業療法士 車谷洋さん

広島大学講師/作業療法士 車谷洋さん

 

福祉工学カフェに参加した感想。。。

発達障害の子どもの支援では「見える化」ということがよくいわれます。見えないものを見えるようにしてあげることで、ぐんと認識しやすくなるタイプの子どもがいます。
これまで紹介したウェアラブル機器の導入は、周囲の環境や自身のバイタルの情報を数値で見えるようにしてくれるものです。自身の感覚を認識しやすくなりますし、そこから周囲の環境との関連を認識できることもあるかもしれません。

福祉工学カフェで発表していた当事者の方たちは「こうやって数値で示されることで、ようやく他の人にも理解してもらえるようになった。そのことがうれしい。これまでは感覚の辛さをどれだけ言葉で伝えても、理解してもらえなかった。」と語っていました。

子どもは自身の感覚を言葉にするのが苦手なものです。どうしてその子がその行動をするのかがわからず、周りにいる大人たちが精神的に疲弊してしまうことがあります。こうした機器を用いることで、どうしてその子がそうするのかを理解するヒントを得られるかもしれません。

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グンゼの製品が展示された福祉工学カフェ会場入り口

 

 

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取材 構成/文 河村典枝   写真提供/グンゼ株式会社