「入学を控えたお子さんの親御さんに伝えたいこと」を、佐藤義竹(筑波大学附属大塚特別支援学校教諭・「すきなのどっち?」考案者)先生にお聞きしました。すると、答えはとてもシンプル。「困っていることを伝えられるようにする」でした。これは、すべての子ども、いえ大人にもいえることではないかと思いました。

支援学校の先生に聞く子育てのヒント 

困らないようにするのではなく、
困っていることを伝えられる子に

学校で、わが子が困らないようにしてあげたい。
そのためには、あれも、これもできるようにしておかなくてはいけないと考える保護者の方がいらっしゃるかもしれません。

でも、大切なのは「困らないようにする」ことよりも、「困ったときに助けを求められる」ことです。

授業中におなかが痛くなったら「先生、お腹が痛い」と訴えれば保健室で休むことができるでしょう。
教科書を忘れたら「先生、教科書忘れました」と言えれば、教科書を貸してもらえるでしょう。
お腹が痛いのも、教科書を忘れたのも、その子が自分から言わない限りはわかりません。
 

助けてもらった体験を積み重ねる
 
自分から「困った」と言えるようになるには、助けてもらった経験を積むことです。
 
子どもは自分から「困った」とは、なかなか言えません。ちょっと元気がないなど変化に気づいたら、おやつでも食べながら「どうしたの?」「何かあったの?」と子どもが伝えやすい雰囲気をつくるといいでしょう。
 
困っていそうな時に、「自分で考えなさい」「自分のことは自分でやりなさい」とつき放すのではなく、「わからないの?」「できないの?」と子どもの気持ちを聞き、困っている状況を子どもが伝えられるようにする。これもコミュニケーション力のひとつです。
 
「ボタンがとめられない」、「宿題がわからない」と言ってきたら、こうすればいいよ、とアドバイスを。そしてうまくできたら「できたね」という言葉かけも忘れずに。
 

できなくてあたりまえと思えばいい
 
何かできた時には、「よくできたね」「がんばったね」という言葉をかけてほしいと思います。これを私たち教師は「フィードバック」と呼んでいます。
 
このフィードバックが、忙しい子育ての中では忘れられてしまうことがあります。できなかったときだけ、「また、できなかったの」と指摘するのではなく、昨日よりも少しでもできていれば「昨日よりもできるようになったね」と、できたときだけフィードバックを。
 
子どもは「できなくてあたりまえ」と思ってください。学校での集団生活は初めてです。できないことだらけです。だからこそ、困ったときに困ったと言えることが大事ですし、できるようになったらいいフィードバックが必要だと思います。
 

 
保護者ががんばりすぎない
 
私自身にも言えるのですが、子どもにあれもこれも身につけさせたいと考えると、つい頑張ってしまいます。
でも、親がひとりで頑張りすぎると疲れてしまいます。疲れると、子どもに前向きに関わることができなくなってしまうんですよね。
子育てのすべてを自分ひとりでやろうとせずに、大変な時は人に頼りましょう。
困ったときに誰かに助けを求めるのは、お子さんだけではなく親御さんも同じです。
だれかに頼る、上手に甘える、それもまた子どもとの良好な関係を築く上でも必要なことだと思います。

 
佐藤義竹先生が考案した「すきなのどっち?」はこちらから。

 

構成/tobiraco 写真/濱津和貴

筑波大学附属大塚特別支援学校支援部長兼教務主任
佐藤義竹先生

さとうよしたけ 筑波大学附属大塚特別支援学校中学部担任を経て、支援部。東京都文京区教育センター専門家、文京区特別支援教育相談委員会委員、筑波大学支援専門家チーム。社会性や自尊感情を育む教育プログラムを実践。自己選択・自己決定、意思表明の力を育む教材として「すきなのどっち?」を、コミュニケーションにおける傾聴の手立てとして「きもち・つたえる・ボード」を開発。著書に 『1日1歩 スモールステップ時計ワークシート』『今すぐ使える! 特別支援アイデア教材50』(ともに合同出版)がある。

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