発達障害の子のためのアロマ 

発達障害とアロマセラピー(1)

●注目され始めた、発達障害の子への自然療法

『aromatopia』(フレグランスジャーナル社)最新号で、「発達障害と自然療法」という特集が組まれています。

アロマセラピストや統合医療関係者のための専門誌なので目にする機会が少ないかもしれませんね。

特集は、50ページ。発達障害の医療の最前線から、さまざまな療法の実践と紹介まで多岐にわたっています。

教育でも福祉でもない雑誌で、このように大きく取り上げられるようになったのは、それだけ発達障害に関心が寄せられているということなのでしょう。

特集のひとつ「発達障害児のためのアロマセラピー」は、tobiracoの療育アロマシリーズを開発した朱永真先生と久保浩子先生の協同執筆による記事です。

これまで、断片的にしかお伝えしきれなかった「発達障害とアロマセラピー」について、ここで改めてお伝えします。

●発達障害のある子の心身は、緊張を強いられている

障害のあるように見えないのが、発達障害の子の特徴といえます。でも、定型発達の子に比べて、いつも疲れています。緊張状態にあります。

発達障害の子に多くみられる感覚過敏は、脳がたくさんの情報をキャッチしています。

例えば、私たちは、少しの騒音なら自然とシャットアウトして、いまやることに集中できます。でも、聴覚過敏があると、それができません。耳をすまさないと聞こえないようなエアコンの音、冷蔵庫の唸り音、外を走る車の音、人の話し声、これらがすべて同じように聞こえて気になって集中できません。

光過敏の子なら、通常は気づかないような蛍光灯のチラチラが見えて疲れてしまいます。

エアコン、冷蔵庫、蛍光灯、人の話し声が混じり合ったスーパーマーケットに15分いると、ぐったりしてしまうという感覚過敏の子もいます。


自律神経の乱れもまた、発達障害のある子に見られる特性です。

気圧や気温の変化に、体が対応できるのも自律神経の働きによるものです。自律神経のバランスがうまくとれない発達障害の子は、外の変化に対応できずに、のぼせたり、手足が氷のように冷たくなったり、発汗できずに体に熱がこもったりします。

自律神経は、活動的になる時に働く交感神経と、リラックスするときに働く副交感神経です。このふたつの神経のスイッチが自然と切り替わることで、私たちは日中活動し、夜睡眠をとる生活をしています。

自律神経の切り替えがうまくいかないと、睡眠障害に陥ったり、日中ぼーっとしたりしてしまうのです。

感覚過敏による脳への溢れる情報。バランスよく働かない自律神経。こうしたことが原因(他にもありますが)で、発達障害のある子は、心身ともに緊張状態にあり、疲れています。

●アロマの香りでリラックスすることを覚える

トビラコが懇意にしている放課後等デイサービス(放デイ)では、療育アロマを早くから取り入れています。

多動でいつもイライラして疲れやすい中学1年生の女の子(ADHD・LD)は、放デイに来て、まず、することは、精油(エッセンシャルオイル)を垂らしたお湯に足を入れた「足浴」です。

足を入れると「あ〜、気持ちいい」。緊張でこわばっていた顔が一瞬で緩みます。香りを嗅ぐことで呼吸が深くなります。深い呼吸は自律神経を整えてくれます。


後で、触れますが、アロママッサージオイルもまた、緊張でこわばっていた表情の子を笑顔にしてくれます。

緊張を強いられている子に「リラックスって、こういうこと」「ほっとするって、こういうこと」と体感できるようにするのも、発達障害の子にとっての精油の役割のひとつです。

精油の香りは、匂いの分子となって、鼻腔粘膜→電気インパルス→嗅神経→大脳辺縁系→視床下部(自律神経の中枢)という経路をたどって、自律機能に影響を及ぼし自律神経を穏やかにしたり、元気づけたりします。

●香りとリラックスの記憶を結びつける

夕暮れ時、どこからともなく夕飯の支度をしている匂いがすると、幼い頃を思い出すことはありませんか。

草の湿った匂いで田舎の風景を思い出したり、整髪料の香りで父親を思い出したりということもあるかもしれませんね。

匂い(香り)と記憶はとても深く結びついています。詳しい説明は省きますが、脳の仕組みがそのようになっているそうです。

緊張を解きほぐしてくれた香りは、その子の脳の引き出しに「記憶」としてしまいこまれます。その香りがすると、記憶の引き出しから安心が思い起こされるようになるのです。

室内に、その子が安心する香りを漂わせておくと、疲れて帰宅した時にほっとすることでしょう。

初めての場所で緊張する子は、「安心の香り」を携帯するといいかもしれません。精油をティッシュに数滴垂らしてポケットに入れたり、アロマシールを貼って香りを吸い込めるようにしたり。香りをお守りに。

*この記事は『aromatopia』2020.no4 vol.29「発達障害児とアロマセラピー」(朱田永真・久保浩子)を参考にしています。

構成・文/tobiraco編集室 撮影/濱津和貴

 

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