先を照らす人の話
ウチの子の小学生時代(2)
「休んだら負けだよ」が娘を追い詰めた
通り過ぎた今だから見えてきたあの頃のこと。発達障害のわが子にああすればよかった、あれでよかった。子育てを振り返りながら、さまざまな話をお聞きしました。子育てに正解はありませんが、参考にしていただければ幸いです。
診断されて変わった親子関係 発達障害とわかってよかった!
山田礼子(東京都 高3女子の母)
いじめによるPTSDが受診のきっかけに
現在19歳の娘が発達障害と診断されたのは中一の頃です。
通信制高校の3年生で、残り少ない高校生活を送っている娘を見て思うのは「発達障害ってわかってよかった。でももっと早くにわかっていたら、こんなに傷つけずにすんだのに」ということです。
娘は幼い頃から怖がりで、運動が苦手でした。徒競走はいつもびり。着替えや身支度にも時間がかかりました。しかし勉強はできたし、聞き分けの良い子だったので、障害があるなどとは夢にも思いませんでした。
娘が4年生の時、学級崩壊していてクラスの中でいじめにあいました。給食当番の時にクラス全員の牛乳を1人で運ばせられたり、机の中にゴキブリを入れられたり。
しかし私は、「休んだら負けだよ」と、頭痛を訴える娘をなんとか登校させようとしていたのです。
やがて娘は、トイレのスリッパの向きを揃え続けるなどの脅迫障害、チック症状も現れ、不登校児に。いじめによるPTSD(心的外傷性ストレス障害)でした。
担任から紹介されて通っていた大学の相談室の先生から「一応検査をしてみたら」と言われて受診した娘は、中一の夏に「アスペルガー症候群」と診断されました。
障害がわかってから、親子の関係が変わる
診断されて「そうだったのか、…」と思いました。今までどれだけこの子につらい思いをさせてきたのか。もっと早くわかっていたら、こんなに傷つけずにすんだのに… .。
それまでは「がんばればできる」と思っていましたが、特性を知ってからは「できなくてもいい」という思いに変わり、子どもに対する言葉がけも変わっていきました。
発達障害の子どもには、「苦手なこと」がたくさんあります。たとえば娘は「掃除当番表」の見方がわからず、自分の番の掃除場所を探しているうちに時間が終わり、「サボった」と思われたり、「サッカーの敵と味方の区別がつかなかったり」したことがあったそうです。
障害がわからなければ「なんでこんなことがわからないの?」と腹が立ちますが、わかっていれば「うちの子はルールを理解するのが苦手なので、具体的に教えてもらえますか?」と先生にお願いすることもできたのです。
不登校を経て、通信制高校へ
小学5年から中学までほとんど不登校だった娘は、その後、紆余曲折を経て、1年遅れて通信制単位制の高校に入学し、好きなイラストの勉強しています。
中一で発達障害の診断を受けてから、娘と私の関係は確実に変わり、よくなりました。
正直に言うと、娘がもっと早くに診断されていたら、少人数の通級教室に通うなどの支援を受けて、もっと楽しい学校生活を過ごせたのではないか、という思いもあります。
今は、娘の得意なことを生かした進路に進めるように、日々の成長を見守っています。
ウチの子の小学生時代(3) 好きなことをやれたから、力を発揮できた
取材・構成:柴田美恵子 写真:tobiraco 『発達障害 あんしん子育てガイド 幼児から思春期まで』(小学館 tobiraco編)より版元の許可を得て転載しています。
わが子の学び方を変える合理的配慮
支援学校の先生に聞く子育てのヒント
-
子どもに幸福力をつける安部博志先生
-
子どもの意欲の皿を広げる安部博志先生
-
困らないようにするのではなく、
困っていることを伝えられる子に佐藤義竹先生 -
家庭でできる学校生活サポートQ&A
特別支援級の両川先生に聞いてみた両川晃子先生
眼鏡で子どもが変わる
木村順さんにきく 学校の先生とのつきあい方
先を照らす人の話
-
ママたちが語るうちの子の学校生活
「なぐさめ」より「理解」を -
ママたちが語るうちの子の学校生活
通級を上手に活用しよう -
小学生ママ3人寄れば、やっぱり発達系あるある話
-
入学を控えた子の親に伝えたいこと
〜自閉症の娘の小学校時代を振り返って〜 -
ウチの子の小学生時代(1)
「私の脳みそ取り換えて!」 -
ウチの子の小学生時代(2)
「休んだら負けだよ」が娘を追い詰めた -
ウチの子の小学生時代(3)
好きなことをやれたから、力を発揮できた -
自閉症児と東日本大震災教えてくれた人 小野寺明美さん
-
「できないこと」をがんばるより、
「できること」を伸ばせばいい <前編>高梨智樹さん -
「できないこと」をがんばるより、
「できること」を伸ばせばいい<後編>高梨智樹さん
支援の現場の人を訪ねて
知って、備えて、安心したい
気づきの道具@「福祉工学カフェ」
tobiracoのおすすめ棚
-
学校に行かない子どもが見ている世界
-
合理的配慮が身近になる本
-
家庭でできること満載。
専門家と保護者をつなぐバイブル的な1冊 -
ベテラン言語聴覚士が語る
言葉を入り口にした子どもの育ち方 -
発達障害と感覚統合の関係が
わかりやすいたとえ話で頭入る名著 -
良き理解者との出会いは一生の宝。
-
お友だちの素朴な疑問に、ママが答えました。
自閉症のことがすーっとわかる絵本。 -
発達障害専門のキャリアカウンセラーに聞く
いい就労の仕方 -
自閉症の息子と母の暮らしを描いた映画『梅切らぬバカ』が大ヒットしたわけ
-
子どもにとことん寄り添う「放課後等デイ」。
映画「ゆうやけ子どもクラブ!」が教えてくれたこと