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ベテラン言語聴覚士が語る
言葉を入り口にした子どもの育ち方
発達障害に関する本は、山ほどあります。最新刊を片っ端から読むより、信頼できる人の本を繰り返し読む方が私にとってはプラスになるように思います。
『発達障害とことばの相談 子どもの育ちを支える言語聴覚士のアプローチ』(中川信子著 小学館 2009年 1034円)は、言語聴覚士の支援の仕方を、専門外の人にもわかりやすく書かれた本です。
著者の中川信子さんは、子どもの言語聴覚士の草分け的存在。長く、現場で子どもたちをみてきたからこそいえることが、ふんだんに書かれています。
そもそも言語聴覚士って、どんな仕事なのか。そこからわからない方にも、おすすめです。
言語聴覚士の仕事の範囲がとても幅広いことが、本書を読むとわかります。「言語」とつくくらいだから、言葉まわりのことだけと思われるかもしれません。じつは、私自身も、ある時までそう思っていました。言葉まわりの仕事をしている人たちが、なぜ発達障害の子とかかわるのかが、不思議だったのです。
いまほど、発達障害のことが理解されていない時代、「発達障害の子は、発語の遅い子が多かったから、言語聴覚士がかかわっていた」という話を聞いたことがあります。「言語」を入り口に発達の支援をしているわけです。
なので、言語聴覚士は医療、保育、教育の分野の知識をもちつつ、コミュニケーションがうまくいくように、その子を支援するという位置づけになっているようです。この点は、意外と知られていないかもしれませんよね。
で、本書ですが、脳のちょっとした不具合からおきる、言葉の問題や発達障害が、とてもわかりやすく書かれています。
大脳とは3段重ねの鏡餅の橙である、と解説されている箇所は、秀逸。
言葉やコミュニケーションは、橙にあたる大脳の働きによるものです。橙を支えているのは、土台となる大きな2つのお餅。一番下は、体の働きの脳で「脳幹」です。
次の段のお餅は、気持ちの脳である「大脳辺縁系」です。この2段のお餅に支えられているのが、「大脳」である橙。だから、橙だけを磨いてもダメなわけで、体の動きや気持ちの領域をしっかりとさせて初めて、橙も安定するわけです。
「ゆっくりと、でも、着実な歩みを支える価値観をもっていると、障害や特性があっても、よく育っている」と語る中川さん。
やはり、長年たくさん子どもを見ている人の言葉には重みがあります。
2009年に出版された本ですが、版を重ねて今でも多くの人に読まれ、言語聴覚士のバイブルともいわれています。
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