学校に行けない子どもたち

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学校に行かない子どもが見ている世界

子どもが発するSOS(助けて)が聞こえる人は、目の前で溺れている子にサッと手を差し伸べるように、あれこれ考えずに動き出します。子どもの「助けて」が聞こえる人は、子どもに選ばれた人なのです。
 
西野博之(認定NPO法人 フリースペースたまりば理事長)さんは、まさに子どもの「助けて」を聞いて動いた典型的な人。
 
不登校の子どもたちのための居場所づくりを始めたのが40年近く前。当時、学校に行か(け)ない子は「登校拒否児」として世間からはとても冷たい目で見られていました。
 
わが子が学校に行けないことを苦に親子心中という最悪の結末を迎える家庭もありました。
 
そんな時代に、西野さんは学校に行けなくなった子どもたちを見て「子どもの命の炎が揺らいでいる」と直感し、居場所を作ったのです。小学生が学校に行けずに固まっている時(比喩ではなく本当に)、これはただ事ではないと感じたからです。
 
学校に行けずに自分はダメな人間と思っている子の「助けて」が聞こえた西野さんは、動かないわけにはいきませんでした。そうして、数人の不登校の子のための居場所として古いアパートを多摩川近くに借りたのでした。西野さんが理事長を務める「認定NPO法人フリースペースたまりば」の「たまりば」は、たま(多摩)リバー(川)が語源です。のちに行政に影響力を持つほどのNPO法人になるとは、当時は思ってもみなかったことでしょう。
 
その西野さんの新刊が、『学校に行かない子どもが見ている世界』(西野博之著 マンガ來來珈琲店 KADOKAWA 2024)。
 

本書を読むと、不登校の子が、いかに大人に理解されていないかがわかります。学校へ行くのがあたりまえと考える大人は、子どもが不登校になると原因探しをします。でも西野さんによると、それはほとんどムダです。不登校になった子は疲れています。だから、まず疲れた子が羽を休めるようにすることがよくて、安心できるようになると子どもは変わってくると言います。
 
発達障害に触れているページもあります。これはよく言われることですが、感覚過敏で教室内の音が耐えられない子や給食の匂いが耐えられなくと不登校になる子もいます。この場合は原因がはっきりしているので環境を変える必要があります。まさに合理的配慮ですね。
 
でも基本的に「原因(犯人)探しをしない」ということです。それよりも、子どもが発していて、もしかしたら本人も気づいていないSOS(助けて)に耳を傾けることではないでしょうか。