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良き理解者との出会いは一生の宝。
『文字の読めないパイロット 識字障害の僕がドローンと出会って飛び立つまで』(高梨智樹 イースト・プレス 2020年8月13日 1,300円+税)
高梨智樹さん(1998年神奈川県生まれ)は、重度の識字障害です。文字は複雑な図形にしか見えず、読むことができません。計算障害もあり、式の意味は理解できても計算することができません。
公立小学校→特別支援学校→定時制高校→東京大学先端研究所 DO-IT Japan(ドゥーイットジャパン)→ドローンの会社を父と起業。
という道で現在に至ります。「DO-IT Japan」や「ドローンで起業」というところだけ取り出すと、特別すぎるように感じるかもしれません。でも、そこに至るまでの道は参考にしたいことがたくさんあります。
本書には、当事者である高梨さんのほか、ご両親、学校の先生、東大の先生など高梨さんをとりまくたくさんの人の話が掲載されています。
そこからわかるのは、障害のある子が自分らしく育つ上でのいくつかの大切なポイントです。
ざっと思いつくまま挙げてみますね。
1.障害があっても、切り抜ける方法は必ずある。
高梨さんは、文字が読めなくても、読み上げソフト(無料)を使うこと、文章を理解できるようになりました。読み上げソフトとの出会いが高梨さんを大きく変えました。
受験は、読み上げや代筆の「合理的配慮」のもと可能になりました。
計算ができなくても電卓を使えば問題ありません。
2.よき理解者との出会いは宝。
高梨さんは、小学校高学年と特別支援学校でいい先生との出会いがありました。先生の指摘で識字障害であることがわかり、自分にあった学び方で勉強できるようになりました。DO-IT Japanとの出会いも、特別支援学校の先生の計らいによるものです。
3.できることを伸ばすと道が開ける。
できないことはやらなくてもいい、できることだけ伸ばせばいいというのが、高梨さんのお父さんのお考えです。ただ、最初からお父さんもそうだったわけではなく、障害を認めるまでに時間がかかりました。でも、わが子の障害を受け入れることができて、この結論に達しました。
4.年齢の違う人が集まる出会いの場を作る。
高梨さんはドローンの仲間たちに「大学なんて、勉強したくなったらいつでもいける」と言われて、大学入学をやめました。家族でも先生でもない第3の人との交流は視野を広げてくれます。
高梨さんに限らずどんな子にも通用するのではないかと思います。家族だけだと限界があります。良き理解者との出会いは、一生の宝になります。そして、良き理解者と出会うためには、障害があっても、切り抜ける方法は必ずあると信じることではないでしょうか。
よかったらご一読を。
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