わが子の学び方を変える合理的配慮 

合理的配慮 5つの誤解

2024年度に義務化された合理的配慮ですが、2年近く経っても全国の学校に普及しているといいがたく、それがなぜなのかを考えてみました。

合理的配慮の「配慮」が誤解を招くから「調整」にすべきなどの意見が多いのですが、いまそれを指摘するのは現実的ではありません。「障害者差別解消法」「障害者雇用促進法」の2つの法律の文言に「合理的配慮」と記されています。法律の文言を変えるのは、そう簡単ではないと思います。

むしろ、普及しないのは合理的配慮を誤解している人が多いからではないでしょうか。保護者だけではなく、教師も誤解しているケースが少なくないと聞きます。

トビラコ店主は、学校現場で合理的配慮の普及活動に努めている人や合理的配慮を受けている人たちに取材してきました。そこで感じたことを「合理的配慮 5つの誤解」としてまとめてみました。参考にしていただけると幸いです。
 
1)診断書や福祉手帳が必要?
 

不要です。

合理的配慮を申し出るにあたって、法律の条文に「診断書」「福祉手帳」が必要とはどこにも書かれていません。

これは、考えてみれば当然です。

たとえば、書字障害があって役所で書類が書けずに代筆を(合理的配慮)をお願いしたとしましょう。そこで、「診断書」や「福祉手帳」の提示をいちいち求められていては、ことが前にすすみません。「困っている」ことを伝えればそれでいいのです。

学校現場も同じです。そもそも発達障害を診断できる医療機関が少なく、医療機関で診てもらうのに何か月も待たなければならないのが現状です。

聴覚過敏の子は、診断書が出されるまでずっとイヤーマフやノイズキャンセラーを使用できずに、学習に集中できないことになります。

学習障害にいたっては、さらに診断できる医療機関が少数です。診断を待っている間に授業が進んでしまいます。配慮があれば学習できたはずなのに、「わからない」「できない」まま学期や学年が変わることになってしまいます。

 
2)担任によって合理的配慮が受けられないことがある?
 

そんなことはありません。

合理的配慮を担任に相談したり申し出たりすることが多いと思います。でも、合理的配慮は担任と取り交わす約束ではなく、学校や学校設置者である教育員会との約束です。

担任が変わったら合理的配慮が受けられなくなってしまっては、困りますよね。極端な例ですが、A先生はイヤーマフを認めてくれたけど、B先生は認めてくれないとなったら、合理的配慮が目指している学習の機会が公平に与えられなくなってしまいます。

残念なことに、よくあるなの話です。担任が変わったら、それまで受けていた合理的配慮をいちから説明しなければならなかったり、配慮が受けられなかったり。のちほど説明しますが、口頭でのやりとりは避けるべきです。個別の支援計画書や文書にしてきちんと残しておくと、一貫して配慮を受けることができます。

 
3)宿題は合理的配慮の対象にならない?
 

対象になります。

宿題をこなすのが難しい、時間がかかりすぎるというときには、先生に相談してみてください。宿題の様子から学習障害であることがわかる場合があります。もちろん、1)でお伝えしたように診断書は不要です。

書くことに困難を抱えた子が漢字の反復練習をしても苦痛なだけで身につきません。書かずに別の方法で漢字を覚えられるなら、その学習法で漢字の宿題にとりくむようにしてみてはいかがでしょうか。宿題の目的が「漢字を覚える」ということであれば、どのような学習法でもいいわけです。

また宿題に時間がかかりすぎるという場合、その子が何らかの困難を抱えていることがあります。1時間で終わるはずの宿題に5時間もかかるようなら、先生に相談してみましょう。

これは、私が実際に聞いた話です。小学2年生の男の子が漢字の練習がうまくいかずに、夜中の2時までかかっていたそうです。でも、数日経つと、覚えたはずの漢字を忘れているのです。のちに、そのお子さんは学習障害であることがわかりました。
 
4)試験や入試では合理的配慮を受けられない?
 

受けられます。

むしろ、試験や入試こそ、他の子と同じスタートラインに立てる配慮が必要だと思います。

別紙で時間延長、試験問題の拡大コピー、読み上げ、代筆、文字入力などは、実際に試験や入試でも実施されている合理的配慮です。ただ、試験のときだけではなく、普段から合理的配慮を受けていると、理解されやすい気がします。「普段の授業では必要ないのに、なぜ試験の時だけ」という先生もいますから。

入試の合理的配慮については、一般社団法人読み書き配慮が積極的に発信しています。代表理事を務める菊田史子さんはお子さんが読み書き障害。ご自身の体験を踏まえて発信しています。
 
5)普通学級にいると合理的配慮がうけられない?
 

そんなことはありません。

困っていれば、普通学級であろうが特別支援学級であろうが関係なく受けられます。

たとえば、廊下側の席だと生徒がバタバタ走る音がうるさくて気が散るという聴覚過敏の子は席を変えることを申し出るケースがあります。これも合理的配慮です。感覚過敏で他のこと同じ体操着を着ることができず、自分で用意したいと申し出れば、これも合理的配慮です。

学習するのに支障がでるほどの困り感があれば、それは当然配慮されるべきです。

合理的配慮を上手に活用するために知っておきたいこと

 
本人抜きに決めない

保護者や担任が良かれと思っても、肝心の本人が望んでいない場合があります。理由はいろいろでしょう。まわりの子の目がきになる、あるいはもう少し頑張れば勉強できるようになる、など。

本人が望まない合理的配慮はうまくいきません。でも、本人が、やはりノイズキャンセラーを使った方が疲れない、キーボード入力のほうがラクと言い出したら、その時に合理的配慮を申し出るのがベストだと思います。

合理的配慮を受けた人に聞くと、小学校のうちは周りの目が気になって抵抗があったけど、中学、高校になって配慮を自分から申し出て勉強がラクになったといいます。

「自分から申し出る」力は、大人になったときにとても大事になってきますよね。
 

話し合いを大切に

合理的配慮に申請書が必要と思っている人がたまにいますが、決まった申請書があるわけではありません。

あまり堅苦しく考えずに、学習に差し支えるほどの困り感と「こうしてほしい」という配慮の内容を担任に伝えましょう。必ずしもすぐに配慮されないかもしれません。担任ひとりで決められない場合があります。

合理的配慮は、学校に過重な負担とならないよう話し合いで決める(建設的対話といいます)のがルールであり、この話し合いが、合理的配慮のもっとも肝となる部分です。

合理的配慮を求めるのは、正当な権利かもしれません。でもその「正当さ」がときに相手(主に担任)にとっての過度な負担になることがあります。歩み寄って折り合いをつけて、まずはスタートしてみる。うまくいけば、それでよし。うまくいかなければ、また話し合って決めていくのも合理的配慮です。


 
口約束ではなく、書面に残す

決まった合理的配慮は、必ず書面に残すようにしてください。担任や学校が変わっても引き続き合理的配慮のもと学習できます。

口約束は、引き継ぎの際に正確に伝わらず、のちのちトラブルのもとになりがちです。個別の支援計画書があればそこに合理的配慮の内容を具体的に記載してもらいます。

支援計画書がなければ、書面に残すようにしましょう。形式は問いませんが、誰が読んでも誤解のないようにできる限り具体的に書くことです。道具を使っているなら写真も添えましょう。

当初決めた合理的配慮は、定期的に見直しが必要です。環境が変わると不要になったり、新たに必要になったりします。そのたびごとに、見直した合理的配慮を書面に残すようにしましょう。
 
 
参考資料:障害のある子の困り感を解決する「合理的配慮」とは?スペシャリストに聞いた、うまくいく心構えと実践手引き

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2026年2.7に配信されたメルマガ「tobiraco通信vol.307」より転載。
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