堀内祐子さんは、発達障害のある4人の子どもを育ててきたお母さんです。わが子が発達障害と知らず、子育てに悪戦苦闘していた時期がありましたが、診断がついてから発達障害について星槎(せいさ)大学で本格的に勉強。そこで出会ったのが阿部利彦先生です。阿部先生は、特別支援教育の第一人者であり、発達障害の子どもをもつ親の相談に長年関わってこられました。阿部先生のあたたかな眼差しは多くの親たちを励まし、共感をよんでいます。
先を照らす人の話 後編
お母さんが自分を大事にすることは
子どもを大事にすることにつながる。
前編はこちらから。
どうしてもほめられないときは、「ありがとう」と。
阿部
発達障害のある子たちは、ほめられた経験が少なく、「いつも叱られっぱなし」と感じている子も多いんです。だからといって、むやみにほめても響きません。
どの子にも、ほめてほしいストライクゾーンがあります。大人が望む行動をしたときにほめるのではなく、「その子がほめてほしいとき」に「その子のほめてほしいところ」をほめることです。そのためにはふだんから子どもをよく観察していないと、それがわかりませんよね。
子どもが、ほめてほしくて話をしてきたら、家事の手をいったん止めて、子どもの顔を見て聞いてあげてほしい。
編
頭ではわかっていても、ほめるのが難しいことがあります。
阿部
どうしても子どもをほめられないときは、子どもに「ありがとう」と言ってみるといいですよ。
「ママの話を最後まで聞いてくれてありがとう」「教えてくれてありがとう」というように。「できて当たり前」ではないんですよ。発達障害の子って、いつも怒られてばかりで「ありがとう」っていわれる機会が少ないんです。だから、人の役に立てて、家族に感謝されるとうれしい。「ありがとう」は他者貢献のスタートなんです。
叱るときはポイントをしぼって。
堀内
長男が発達障害だとわかるまでは、毎日毎日、長男のこだわりや、パニックに振り回され、怒ってばかりいました。
阿部
発達障害の子は、「なぜ自分が叱られたのか」がわからないことがあります。「何やってんの!」っていってもダメ。叱るポイントをはっきりさせて、「こうするんだよ」って具体的に教えることが大切です。
ときどき、子どもにネガティブな暗示をかけているお母さんがいますね。「あんたはいつもおそいんだから」とか「片づけがヘタだね」って言ってると、本当にそういうふうになってくる。そうじゃなくて子どもにはポジティブに接しているからこそ、叱ることが伝わるんです。
お母さんもリフレッシュする日を。
堀内
私は子どもが4人いたから、ほんとに子育てが延々と続いたんですけど、そのときどきに自分にできる形で楽しみを見つけてきました。子どもが寝静まったあとにこっそりスイーツを食べたり、末っ子が幼稚園に上がってからは、トールペイントを習ったり、ママ友とランチしたり。
阿部
それはとても大切なことですね。実は子どもをほめるには、エネルギーが必要なんです。お母さんが疲れ過ぎていてエネルギーが低下していたら、なかなか子どもをほめられないんですよ。とくに発達が気になる子のお母さんは、リフレッシュする時間が必要です。お母さん休業日。
お母さんが自分を大事にしてするってことが、子どもを大事にすることにつながっていきます。
堀内
ほんとうにそうですね。
編
本日はありがとうございました。
前編はこちら。
取材・構成・文/柴田美恵子 写真/tobiraco編集室
この記事は、子育て雑誌『edu』(小学館、2016.3月号で休刊)の別冊『発達障害の子の子育て応援BOOK』(2015年発売)に掲載されたものです。
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