新入学、新学年を迎える季節、気になるのは担任の先生。
先生が、必ずしも発達障害に詳しいとは限りません。まずは先生に理解してもらいましょう。
そのためにどうしたらよいかを、作業療法士の木村順さんにお聞きしました。
 
 

木村順さんにきく 学校の先生とのつきあい方 前編

ウチの子紹介カードを作ろう

 
 
「適応力」のつまずきと考える

 
発達障害とは、ひと言で言えば、知的な能力に遅れはないにもかかわらず、“その時・その場・その状況”に合わせる能力、つまり「適応力」につまずきがあり、「発達の凸凹」がある状態です。
発達障害の子が増えたと感じる背景には、保育・教育現場にも情報が増えたぶん、昔なら「変わった子ね」で受け止められていた子も、診断を受けるようになった経緯があります。みんなと一緒の行動をよしとする風潮が凸凹のある子を目立たせているともいえます。
 
発達障害の状態を示す子ども達の増加。その絶対数が増えているのか否かは、私にもよくわかりません。ただ、元々そういった資質を持って生まれた子どもでも、豊かな「自然(ナチュラルというよりワイルドな)」と「異年齢(6〜8学年差)集団」で遊び込む、幼児期〜児童期の経験は、「適応力」を回復させていく、大きな原動力となっていたことは、まちがいないでしょう。
 
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周囲の理解を得ていじめから守る
 
人は誰しも苦手と得意がありますが、発達障害の子たちは凸凹の差が大きいのが特徴。苦手とする箇所が独特です。たとえば大きな音を極端に嫌う、人に触られるのを嫌がる、極端な偏食、文字を1行ずつ読むのが難しいなどです。ほかにもいろいろなケースがありますが、多くの子がそれほど気にしなかったり、苦労せずにできることを苦手とするので、まわりの理解がどうしても必要となってきます。周囲の無理解は、子どもを傷つけ、いじめや不登校、引きこもりなどの「二次障害」につながりかねません。わが子をそんなつらい目にあわせたくないですよね。

 

特性をカードに記して伝える

発達障害の情報は増えていますが、十分理解している先生ばかりではありません。新入生の場合、幼稚園や保育園からの申し送り書が届きますが、偏見や先入観をもちたくないからと見ない先生もいます。それならなおさら担任の先生にわが子の特性を理解していただく方法を考えましょう。
先生に伝える方法としておすすめしたいのが、「ウチの子紹介カード」です。わが子の特性をわかりやすく記して担任の先生に手渡ししてください。

 


ウチの子紹介カードの書き方(例)

【基本情報】
氏名
血液型
体重
生年月日
電話連絡先(3つくらい。優先順位もつけておく)

【本人の性格や特徴】
・話しかけても、目線を合わせることや、適切に対応を返すことが難しい。
・状況の変化を理解し、臨機応変に対応することが難しい。
・同年代の子どもと関わることが苦手で、一緒に遊べない。

【先生へのお願い】
・独り言を言っているときは「静かに」と声をかけてください。
・集団に入れないときには「一緒にやろう」と声をかけてください。
・耳ふさぎは、自分でやめるまでそうっとしておいてください。
・予測が立たないことが苦手なので「〇〇の次は〇〇をやるよ」などど予定を知らせると動きやすくなります。

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得意をどんどん伸ばす

この子たちは、凹部も大きいですが、凸部も抜きん出ています。
「コミュニケーションは苦手だけど、数字に強い」「抜群の記憶力」「落ち着きはないけど頭の回転が速い」など、いいところはまさしく「天才肌」です。
それなら、苦手なことを嫌々やらせるのではなく「得意なことをどんどん伸ばそう」と考える専門家が増えてきました。苦手な分野にだけ目を向けず、得意をうんと伸ばす。これはどのような子どもであれ通用することです。子育ての大切なところを発達障害の子どもたちが教えてくれているのかもしれませんね。

 

木村順さんにきく 学校の先生とのつきあい方 後編 ポジティブ・クレーマーになろう

 


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取材・構成・文/江頭恵子   イラスト/ますこえり 撮影/tobiraco

作業療法士。発達障害臨床研究会・発達療育実践研究会代表
木村 順さん

作業療法士。発達障害臨床研究会・発達療育実践研究会代表。東京都足立区「うめだ・あけぼの学園」で臨床経験を積んだのち、2005年「療育塾ドリームタイム」を立ち上げ発達につまずきのある子の保護者の相談や療育アドバイスを行う。著書に「育てにくい子にはわけがある」(大月書店)、『発達障害の子を理解して上手に育てる本』(小学館)、『発達支援実践塾ー聞けばわかる発達方程式』(学苑社)など書著多数。LDサポート・療育ソラアル(東京・亀有)の療育スーパーバイザーを務める。

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