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お友だちの素朴な疑問に、ママが答えました。
自閉症のことがすーっとわかる絵本。
『すずちゃんののうみそ 自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんの、ママからのおてがみ』(文/竹山美奈子 絵/三木葉苗 監修/宇野洋太 岩崎書店 2018年 1,600円+税)
「すずちゃんは、年長さんなのになんでひとりで靴がはけないの?」
素朴な疑問を屈託なく聞く保育園のお友達に、すずちゃんのママである竹山美奈子さんが答えた絵本です。監修は宇野洋太先生(児童精神科医、よこはま発達クリニック勤務)。
手のひらひら、ぎこちない動き、急に笑ったり、泣いたりするなど、ほかの子から見たら不思議に思える特性をわかりやすく伝えています。わかっているつもりになっていた自閉症の特性が改めて、そうかと納得できるたとえや言い方で書かれています。子どもだけではなく、大人も深く納得できる本です。
絵がとてもきれい。大胆な構図や色づかいと繊細なタッチ。まるですずちゃんの自閉症の世界に入り込むような不思議な感覚にとらわれます。絵を描いているイラストレーターの三木葉苗(はなえ)さんの妹さんは、重度知的障害があり自閉症。言葉をもたない妹さんのために、絵でコミュニケーションをとるうちにイラストレーターになりました。独学で描き始めたというそのイラストは、自閉症児であるすずちゃんの特徴をじつによく捉えています。そして、何より根底にあたたかな眼差しがあります。
その三木さんのあとがきが泣けてきました。
妹さんを迎えに駅まで行ったった三木さん。こちらに向かっているスクールバスの窓際に座っている妹さんを見つけます。
「誰かとおしゃべりこそしていないが、妹の顔には、
柔らかい笑みが浮かんでいる。
バスが停まると、きちんと自分の荷物を持って立ち上がり、
先生と短い「さよなら」のやりとりをして、ステップを降りて来る。
それだけの光景を見て、私の胸はじんじんと熱くなり、
目から溢れてくる涙を、必死でこらえなければならなくなる。
(あとがきの「思い出」より一部抜粋)
これ、三木さんとほぼ同じ境遇の私にもとてもよくわかるんです。どんなに慈しんで関わっていても、別の世界では別の顔を見せます。この一文を読むと鼻の奥がツーンとしてしまう。
家で見せる顔、家以外の世界で見せる顔、いろいろあってその子(人)なんだということです。
絵本に描かれたすずちゃんの「不思議な行動」のひとつひとつを宇野洋太先生が解説。これがまたわかりやすくて、ストンと落ちます。
宇野先生は監修を終えて次のように述べています。
ASDのある方々と接し、その文化を学ぶ中で、ASDに留まらず、人としての多様性と尊厳というものを教わっているように感じています。すずちゃんと園の子どもたちの交流の様子から、ASDの理解はもとより、お子さん、家族、そしてに地方会われている大切な方々との異文化光量が、より豊かのものとなるための手がかりを探していただけるのではないかと思っています。(宇野洋太「監修を終えて」より)
何度でも読み返せる絵本です。園に自閉症のお友達のいるというお子さんには強くおすすめしたいです。もちろん、そうでない人にもおすすめです。
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