発達障害の子をもつ親のいちばんの悩みは、周囲の理解を得にくいことです。悪気はないのに、周囲とトラブルになりやすく誤解されやすい子どもたち。周囲の無理解で親子ともに傷つくこともあります。前編はママたちの悩み、後編は通級の上手な活用法を中心にお届けします。
先を照らす人の話 後編
ママたちが語るうちの子の学校生活
通級を上手に活用しよう
前編に続き「通級指導教室」(通級)にわが子を通わせている4人のママたちに「通級」の仕組みやメリットなどについて伺いました。
◎教えてくれたママ
【Aさん】
小6の男の子が広汎性発達障害。人の気持ちを理解するのが苦手。
【Bさん】
小4の男の子が学習障害が疑われ、午後にはじっとしているのも苦手。
【Cさん】
小5の男の子。注意欠陥多動性障害があり、じっとしているのが難しい。
【Dさん】
中2の男の子が受動型アスペルガー症候群で思わぬことで傷つく。
専門的な指導を受けることができる「通級学級」。呼び名は自治体によって異なります。「ことばの教室」「ことばときこえの教室」「情緒教室」「コミュニケーション教室」などと呼ばれていますが、指導の内容や目的は変わりません。
通級の対象は自治体によって多少の違いはあるものの、発達障害の診断を受けていなくても、通常学級での学習に「困った」ことがあれば相談できます。就学前でも入学後でも気づいた時点で支援を申し込めます。
通級の指導内容は、各学級によって違いますが、小集団でのソーシャルスキルトレーニングや、個別での教科の補充、運動指導などが行われています。
一人ひとりの苦手に合わせたスキルを学ぶ
Aさんのお子さんは幼稚園のころからお友達の気持ちを読み取るのが苦手で、小学校入学と同時に「通級学級」に通っています。
「ソーシャルスキルトレーニングでは、少人数のグループでシーンを想定し、ゲーム形式で楽しみながら、お友達の気持ちを理解するスキルを教えてもらいます。うちの子は気持ちがめいっぱいになると、パニックになることがあるのですが、通級は学校の中でもほっとできる居場所になっているようです」
また、BさんやCさんのお子さんはじっとできず、離席することが多くて、担任の先生に叱られることが多かったそうですが
「ターザンロープやトランポリンで平衡感覚に刺激を入れるなど、日常ではなかなかできない活動をしてもらうおかげで、少しずつ落ち着けるようになりました。保育園時代は特に園から指摘されることもなく、入学後、初めて、子どもの状態に気づきましたが、もっと早く通級に通わせればよかったと思いました」とのこと。
成功体験を積み重ね
自己肯定感を育てる
発達障害のある子どもたちは、小さいころから「ダメよ」「しっかりしなさい」と怒られることも多く、自己肯定感が育ちにくいと言われます。もし「どうせ自分なんて」という気持ちが膨らむと、不登校や非行など、二次的な障害につながることもあります。
Cさんは言います。
「通級では二次障害を防ぐために“自己肯定感”を育むことが重視されています。小さなステップで成功体験を積ませたり、持久走を走りきる達成感を味わったり。何より、保護者が子どもの特性を理解することで、頭ごなしに叱ることが減るのは大きいでしょう。通級の先生に子どものことを相談できるのも助かります」
同じ悩みを持つ仲間が
できるのもメリット
通級には仲間がいるメリットも大きいです。他の子の解決法を参考にして互いのスキルを共有したり、誰かに助けを求めることも悪いことではないと気づきます。仲間ができるメリットは保護者も同じだとDさんは言います。
「この子たちの子育ての道のりは平坦ではないけれど、みんなで悩みを共有しあえるのは心強いです。大変さを理解しあえる仲間だからこそ励ましあえるし、講演会や支援の場などの地元情報を伝えあうことができます」
通級指導学級主任教諭は
「困っていることや苦手なことに向き合うことや、対処方法を考えることも大切ですが、子ども自身のよさや強みを理解し、生かしていくという視点も大切です。凸凹がありつつ、トータルで自分を好きになれるといいですね」と言います。
ひとりでどうしてよいか悩んだときは、通級の先生が担任との間を取り持つ「通訳」の役目をしてくださることもあります。子どもの様子が気になったり、担任にうまく説明できない時は、学校の特別支援コーディネーターや、「通級」の先生に相談するのも手かもしれません。
取材・構成・文/江頭恵子 撮影/tobiraco
ママたちが語るうちの子の学校生活 前編 「なぐさめ」より「理解」を
この記事は、トビラコ店主が編集者時代に編集。子育て雑誌『edu』(小学館、2016.3月号で休刊)の別冊『発達障害の子の子育て応援BOOK』(2015年発売)に掲載されたものを版元の許可を得て転載しています。
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