気づきの道具@「福祉工学カフェ」 第1回 アウトドア用スマートウォッチ、カシオ「WSD-F10」
気象の変化から心身の状態を知る
道具で発達を応援するtobiracoが前々からご紹介したかった道具があります。
発達障害の子(人)の心と体の状態を「見える化」する道具です。今、どのくらい気持ちが不安定なのか、パニックが起こりそうな環境下に置かれているのかどうか、それを数値にしてセルフモニタリングすることができれば、無用なトラブルを防ぐことができます。
いわば、「気づきの道具」。2回に分けてお届けします。
今回、とり上げた道具は福祉工学カフェ(国立障害者リハビリテーションセンター研究所と新エネルギー・産業技術総合開発機構共催)で昨年7月に開催された「発達障害当事者のセルフモニタリング支援のためのウェアラブル機器〜感覚過敏の定量化と自律神経系に影響を与える要因の探索〜」で紹介されたものです。実際に発達障害の当事者が着けてその感想を発表しました。
トビラコ店主の知り合いでもある臨床心理士の河村典枝さんと雑談する中で、たまたま福祉カフェの話になりました。このイベントは昨年に開催されたのですが、紹介されている道具がとても興味深い話だったので書いていただきました。1回目は、アウトドア用のスマートウォッチ。発達障害の人に意外な使い方があったというお話。
お魚マークが多いと心も体も調子がいい
発達障害の子どもと関わっている人たちは、天候と子どもの心身のコンディションの関連を経験的に感じています。感覚が過敏であると環境の影響をダイレクトに受けてしまうのです。
カシオの「WSD-F10」は、アウトドアを楽しむ人向けのスマートウォッチ(腕時計型のウェアラブル機器)です。気圧や高度、方位や潮汐(ちょうせき)などといった様々な環境の情報を測定できるのが特徴。この測定機能が感覚過敏を抱えた発達障害の子(人)たちの助けになることはあまり知られていないかもしれません。
このスマートウォッチには、釣りを楽しむ人向けに、釣果の予測をしてくれる機能がついています。どのくらい釣れやすいかをお魚のマークの数で示してくれるようになっています。
発達障害の当事者がこのスマートウォッチを身に着けてみたところ、お魚のマークの数が多いときは心身の調子が良く、お魚のマークがゼロのときは調子が悪いことに気づいたそうです。
港の潮汐も目安になる
スマートウォッチが示す釣果予測は、身に着けている人の現在地の月齢と月の角度をもとに予測しているのだそうです。潮の干満は月齢と連動しています。
もし、スマートウォッチを着けていなくても、最寄りの港の潮汐を見ると自身の心身のコンディションを簡単に予測すことができるそうです。それも、このスマートウォッチを着けたことで気づいたそうです。
台風が近づくと頭痛がする
北海道内の鉄道のある路線で、この場所を通ると一部の人達が失神する、と当事者間で噂になっている路線があるのだそうです。その路線をこのスマートウォッチを着けて通ってみたところ、気圧が乱高下していることがわかりました。
気圧が人間の心身に影響を与えているということは以前よりいわれており、「気象病」という言葉も最近は知られるようになってきました。“台風が近づくと頭痛がする”“雨が降ると気持ちが落ち込む”といった症状が「気象病」です。
感覚が敏感である人たちの存在は、そうでない人たちにも気づきをもたらしてくれます。
他の当事者の方の発表では、このスマートウォッチの気圧を測定する機能による気づきを聞かせてもらえました。
ご紹介した商品:カシオ「WSD-F10」70,000円+税
付属品 ACアダプター 専用充電ケーブル
https://wsd.casio.com/jp/ja/products/
取材 構成/文 河村典枝 スマートウォッチ写真提供/カシオ計算機株式会社 イメージ写真(風景)/tobiraco