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合理的配慮が身近になる本
合理的配慮は、障害の特性ゆえに不利な立場に置かれることのないよう、障害のある子(人)を守る法律です。
詳しく知りたい。配慮の提供を求めたい。そう思ってもハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。そこで合理的配慮が身近に感じられる3冊の本をおすすめします。
●わが子がDCDとわかってから、合理的配慮を受けるまでをコミック化。専門家のアドバイスも収録
『なわとび跳べないぶきっちょくん ただの運動オンチだと思ったら、DCD(発達性協調運動障害)でした!』(オチョのうつつ著 古荘純一監修 合同出版 2023年)1,600円+税
次の項目にかなり当てはまるという場合、DCD(Developmental Coordination Disorder=発達性協調運動障害)の可能性ありだそうです。
・書字が極端にバランス悪くて下手
・消しゴムをうまく使えない
・ハサミをうまく使えない
・食べこぼしが多い
・ヒモを結べない
・ボタン留めが苦手
・リコーダーの穴を塞げない
・ボールが苦手・なわとびが苦手
著者のオチョのうつつさんの息子ウノくんがまさにこれ。脳というのは、さまざまな情報をまとめて(統合)、出力するコントロールセンターのようなもの。運動機能もまた、さまざまな情報がインプット(入力)されて、出力した結果です。・
視覚・聴覚・触覚・平衡感覚・位置感覚などの情報を統合して出力するのが協調運動。統合がうまくいかないのが発達性協調運動障害です。
オチョのうつつさんは小児科医の古荘純一先生から発達性協調運動障害という障害特性を聞き、腑に落ちました。その後、学校で合理的配慮を得てウノくんは変わります。
コミックに描かれている例と古荘純一先生のわかりやすい解説でDCDの特性と合理的配慮がすんなりと理解できるようになります。
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●100人いたら100通り。ヒント満載、学び方の手引き
『LD(ラーンニングディファレンス)の子が見つけた こんな勉強法 「学び方」はひとつじゃない!』(野口晃菜・田中裕一著 合同出版 2023年)1,800円+税
著者二人は特別支援教育のスペシャリストであり、合理的配慮の推進役としても活躍しています。机上の論ではなく、現場でたくさんの子どもたちを見て、話も聞き、また現職の教師との交流も活発だからこそ語れるさまざまな事例。ともかくその数に圧倒されます。このうちのどれかひとつは、わが子に当てはまるものがあるのではないでしょうか。
また、実際に学校で合理的配慮を受けてきて、いまは大学院生だったり社会人だったりする当事者たちと著者のやりとりも掲載。合理的配慮を受けることで「困り感」を伝えることの大切さがわかり、子どもの成長にもつながると思わせてくれます。
*民間事業所は2024年4月より合理的配慮が義務化されましたが、これに先立って公立学校では2016年施行の障害者差別解消法により合理的配慮が義務づけられていました。
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●子どものライフステージ別の好事例と合理的配慮がこの1冊でわかる本
『通常学級の発達障害児の「学び」を、どう保障するか〜学校・家庭・福祉のトライアングル・プロジェクト〜』(田中裕一著 小学館 2022年)1,700円+税
教師や支援者を意識して書かれていますが、保護者が読んでも十分に得るところがあります。合理的配慮も含め、障害のある子への手立ての事例は、良いものがたくさんあるのにもかかわらず、知る機会が少ないのではないでしょうか。
どちらかというとネガティブな事例がSNSなどを通じて拡散されがちです。でも、参考になり取り入れられるものが多いのは、うまくいっている事例。本書は、幼稚園から就労までを子どものライフステージ別に好事例を取り上げています。
著者の田中裕一氏は前文科省特別支援教育調査官であり、知的障害者施設、特別支援学校に勤務したのちに文部科学省に入り、特別支援教育に携わった異色の経歴の持ち主。学校現場も保護者の立場も両方を熟知しているから語れる豊富な好事例です。
合理的配慮についても詳しく解説されています。この1冊で合理的配慮のすべてがわかるはずです。
合理的配慮の申し出から決定までは、こちらの記事をご覧ください。