わが子の学び方を変える 

通級、いま知っておきたいこと

そもそも通級指導教室ってなに

通級指導教室(通級)を、「勉強が遅れている子」のための補習と誤解されることもありますが、そうではありません。どのような子が対象となるのか、目的は何か、今後どのようになっていくのかについて考えてみたいと思います。
 

●対象となるのは

通常の学級での学習におおむね参加できて、一部指導が必要な児童生徒</通級による指導の対象となるのは、言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、LD、ADHD、肢体不自由、病弱及び身体虚弱の児童生徒であり、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒です。

●通級の定員は?

令和9年度、13人に

特別支援学級は生徒8人に対して教師1人と決まっています。 特別支援学校なら生徒6人に対して教師1人です。

通級は平成29年度に制定された比較的新しい制度です。 10年かけて段階的に実施していくというのが文部科学省の方針。

通級による指導の概要について

令和9年度には生徒13人に対して教員1人が配置されていなければなりません。

ということは、令和8年度の段階で準備が全て終わっていて、令和9度から受け入れ体制が整っていなくてはなりません。つまり、今年度の令和7年から通級の準備が必要で、教育委員会や学校は通級に本格的に取り組まざるを得なくなってきました。

通級を申し出るタイミング

通級の活用を最終的に決めるのは教育委員会や学校ですが、申請するのは保護者です。 あるいは、高学年の場合は本人かもしれません。ここで注意しておきたいのは、申し出るタイミングです。

通級に入れるタイミングは自治体によって違います。もし、途中から通級を利用したいと考えるようになっても、就学時や、新年度からと定められている自治体であれば1年待たなければなりません。

通常級では難しいとなったら、そのタイミングで通級を利用できる自治体もあります。

教育委員会にあらかじめ問い合わせておくと良いかもしれません。あるいは担任の先生に聞いても良いでしょう。

通級で教科の学習はできるの?

通級は障害ゆえに課題を抱えている児童生徒のための教室です。

障害による困難を克服したり、改善することで通常学級で学べるようにします。

コミュニケーションゲームを通級で見かけることが多いかと思いますが、ゲームを通してコミュニケーションの楽しさを体験したり、やりとりのスキルを身につけていき通常級で生かします。

学習障害の場合はどうでしょうか? 障害をカバーする学び方を身につけます。

とてもわかりやすい例を挙げてみます。

知的に遅れがないのに教科書をうまく読めない子が、通級でリーディングルーラーを使ったところ、読み飛ばしがなくなったとします。リーディングルーラーで困難を克服(改善)することができたということです。リーディングルーラーを通常級でも生かすことで教科書を理解しやすくなります。

通常級を目標にしない方向へ


現在は、通級で身につけたことを、通常級で生かす。これが通級での指導の目標です。

でも、令和7年7月4日の文科省教育課程企画特別部会 の資料 通級による指導を受ける児童生徒の特別の教育課程の見直しを読むと、改善のイメージとして次のように書かれています。

・障害の状態に合わせて、各教科の目標や内容の一部を考慮したり、場合によっては取り扱わない。

・目標や内容を個別に設定し、自分にあった内容やペースで学ぶ。

つまり、通常級においても障害に合わせて個別に学びましょう、ということです。これまでの一斉授業からの脱却といえます。

いつから実施されるのかは発表されていません。でも文科省が発表しているのですから、いずれ実施されることでしょう。通級で学ぶ子にとっては朗報です。

障害のある子供に対する教育課程の 充実について より

家庭、学校、福祉、医療の連携がカギになる

通級ではどのような先生が教えているのでしょうか。

通級の先生を決めるのは校長であることが多いようです。本人の希望で決まる場合もあります。 特別支援学校の教師というわけではないので発達障害の特性に詳しいわけではありません。

教師自身が自己研鑽して発達障害の特性を学ぶということになります。教師が発達特性にどれだけ詳しいかということよりも、通級の教師に求められているのは、発達障害に詳しい専門家と連携しながら支援できることです。

専門家とは、児童精神科医、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、あるいは放課後等デイサービスなどの療育機関であったり、それぞれの領域で発達障害の子と関わっている人たちです。

つまり、通級の先生に必要なのは、この連携する力、人とつながる力といえます。もちろん、保護者も含まれます。

「個別の支援計画書」の情報は、保護者も共有する

「個別の支援計画書」はご存知だと思います。特別支援学校、特別支援学級、通級での支援には必ず個別の支援計画書の作成が必要です。 何を目標にしてどのような計画で進めていくかを個別に作成します。「個別の支援計画書」は、本人と保護者の意向を 踏まえて、関係機関と情報を共有することが義務づけられています。

意向が反映されてるかどうか、必ず確認するようにしましょう。

個別の支援計画書を見せていただけますか、あるいはコピーさせていただけますか、と教師に申し出てください。冗談のような話ですが「個人情報なので見せられません」と拒否する教師がいるそうです。個人情報といっても我が子の情報ですからね。

今は、学校に全てお任せという時代ではありません。学校と専門機関、そして家庭が連携して子どもを支援していくと考えたほうがうまくいくのではないでしょうか。学校にお任せという考えだと、子どもがうまくいかないのは全て学校のせいになってしまいます。 学校は万能ではありません。 大切なのは、連携することです。特に通級の場合は連携がものをいいます。

余談になりますが、連携という意味では、放課後等デイサービスを選ぶときには、学校とうまく連携できているかどうかも大きなポイントになるでしょう。

先生と情報共有する方法

通級は、制定されてから10年です。まだまだ周知されているとは言い難く、通級の意義や指導について詳しくない教師も少なくありません。

通級については文科省が、とてもわかりやすいガイドライン「 初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」を作成しています。これを先生と共有してみてはいかがでしょうか。


先生自身、ガイドラインを熟読していない場合があります。何しろ今の先生は忙しいのでその時間がないのかもしれません。

「先生、ガイドラインにこんなふうに書いてあるので、うちの子にもお願いできませんか」と根拠のある頼み方だと先生は受け入れやすいと思います。もちろん話し合いと言うことにはなると思いますが。 少なくとも、話し合いの材料としてもガイドラインを使うことができます。

親の会や、放課後等デイサービスの保護者の集まりでも、このガイドラインをもとに勉強会を開いているところもあります。ガイドラインに沿ったやりとりだと、無用なトラブルを防ぐこともできます。

PDFをダウンロードすると全文を読むことができます。

通級のすべてがわかる本がこちらです。Q&A形式でわかりやすく書かれています。

障害に応じた通級による指導の手引き解説とQ&A 改訂第3版(文部科学省編著 海文堂)

もう少し簡略化されたポイントを絞ったものが知りたいという場合はこちらがおすすめです。

障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)(文部科学省 編著)より抜粋

なお、通級は、必ずしも障害の診断書が必要というわけではありません。「障害に応じた通級による指導の手引解説とQ&A(改訂第3版)」には、 以下のように書かれています。

「通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断することが必要です。」

医師の診断書が必要と誤解している先生も時々いらっしゃいますので念のため。

本人の意向を聞き取る

通級は、 本人が行きたいと思わなければ始まりません。

親や教師が通級を活用すれば、困難が軽減されると思っても、必ずしも本人はそう思わないかもしれません。「通級は嫌だ」と本人が拒否した場合、どうしたらいいでしょうか。

嫌なら通わなくてもいいよと言ってしまっては、その子の困難は軽減されないままになってしまいます。嫌な理由がとても重要です。なぜ嫌なのかを聞いてみてください。

その子なりの理由があるはずです。たとえば在籍している通常級のクラスの係をやりたいのに、通級に通ってしまうとそれができなくなると思い込んでいた子の話も聞いたことがあります。そこで通常級の係をやりながら、通級を活用する方法を とったそうです。

この子の場合、通級が嫌だったわけではなく、通常級で係をできなくなるのは嫌だったということです。
子どもが嫌だと拒否した場合は、必ず理由があると思います。そしてその理由の中に思わぬ特性が隠されていることもあるのです。

これは通常級の例ですが、先生を嫌う理由が板書をすぐ消してしまってノートに写すことができないとしたら、その子は書くことに困難を抱えている可能性があります。
だとすれば、合理的配慮を申し出たり、それこそ通級を活用して学習すれば良いわけです。

嫌がるからやらせないというのではなく、どういう方法ならその子が学べるのかを考えることが大切ではないでしょうか。

自身の困難に気づき、軽減する方法を身に付けたり、自分の特性に合った学び方で学習することは社会に出てからも役に立ちます。周りに無理に合わせようとするのではなく、自分に合った方法や工夫を身に付けることが、ひいては生きやすさにつながると思います。

2026年5.8に配信されたメルマガ「tobiraco通信vol.308」より転載。
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