わが子の学び方を変える 

読み書き障害のアセスメント(困難の原因を探る)

 

「勉強は嫌いではないのに、教科書だけが読めない」

「文字を書くのに、とても時間がかかる」

そんな困りごとを抱えている子どもは少なくありません。

努力不足でも、やる気の問題でもなく、「読み」や「書き」のどこかに、その子ならではのつまずきが隠れていることがあります。

そのつまずきを見つけ、子どもに合った学び方や支援につなげるために行うのが、読み書きのアセスメントです。

この記事では、読み書きのアセスメントとは何か、代表的な方法、相談先、そして結果をどのように支援へ生かしていくのかについて紹介します。

アセスメントは、子どもの困りごとを知るためのもの

「アセスメント」という言葉をお聞きになったことがありますか。

アセスメントとは、発達障害のある子の特性を分析して見立てることです。専門家は「評価」と呼ぶことが多いのですが、一般には「診断」に近いものと考えるとわかりやすいかもしれません。

たとえば、読み書き障害なら、「一文字ずつなら読めるのに、単語になるとイメージできない」「漢字の形をうまく書き写せない」など、どこでつまずいているかを見ていきます。

算数障害であれば、「数の大小がわからない」といった困りごとを確かめます。つまずきがわかることで、適切な対処や支援に結びつきます。

何より、アセスメントによって、子ども自身が「努力不足だから勉強がわからないわけではない」と知ることができます。

学習障害は、大きく「読み書き障害」と「算数障害」に分けられます。それぞれアセスメントの方法が異なるため、この記事では読み書き障害を取り上げます。

学習障害とは

読み書き障害のある子の保護者から、次のような話を聞くことがあります。

「うちの子は、小学校入学までは旺盛な好奇心と、大人顔負けの理解力もあったのに、入学したとたんに学校の勉強についていけなくなりました」

「絵本の読み聞かせが大好きで、活発な子だったのに、小学校に入って文字の読み書きを習うようになってから、元気がなくなりました」

読み書き障害(読み書き困難)の子どもたちが、多かれ少なかれ直面していることではないでしょうか。読み書き障害は、学習障害のひとつです。

文部科学省は、学習障害を次のように定義しています。

学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力について、なかなか習得できなかったり、うまく発揮できなかったりすることによって、学習上、さまざまな困難に直面している状態をいいます。

文部科学省「学習障害(LD)の定義

学習障害のある子には、合理的配慮など、支援の工夫が必要です。その前提となるのが、子どもがどのような困難を抱えているのかを、教師や支援者が見極めることです。

見極める方法がないと、「怠けている」「ふざけている」と見られたり、知的な遅れがないにもかかわらず、知的障害だと思われたりすることがあります。

アセスメントを活用することで、子どもが必要としている支援に結びつき、何より、その子の自尊心を守ることにつながります。

読み書きの困難は、どこにあるのか

読み書き障害のある子どもたちを長年支援してきた近藤武夫先生は、読み書き障害について、次のように説明しています。

  • 「読み書き障害=まったく読み書きができない」ということではなく、読み書きを正確かつ流ちょうに行うことが難しい状態です。知的な障害とは異なるため、文章の意味を理解できないわけではありません。
  • 文字を見て認識することは難しくても、音を聞いて意味を理解できる子や、文字の拡大、行間の調整などで理解しやすくなる子もいます。
  • 学校でよく行われるWISC(知能検査)だけでは、読み書きの能力を測ることはできません。読み書きに適したアセスメントが必要です。
  • アセスメントは、音声教材などの支援を、ためらわず利用し、認めるための根拠にもなります。

読み書きのアセスメント(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野)

 

代表的な2つのアセスメント

近藤先生が挙げている代表的なアセスメントには、次の2つがあります。

  • STRAW(ストロウ:Standardized Test for Assessing Reading and Writing)
  • URAWSS(ウラウス:Understanding Reading and Writing Skills of Schoolchildren)

いずれも、読みの流ちょう性や、文字を正確に書き取る力などをみます。

STRAWでは、ひらがな単語、カタカナ単語、意味をもたない文字列、文章などを読む速さと正確さを確認します。

たとえば、「ところてん」を「とろ、ところてん」と読んだ場合は、誤り1回、修正1回。「と、ところ、とろ、ところてん」と読んだ場合は、誤り1回、修正3回として記録します。

文章の場合も、どこで読み誤ったか、どのように修正したかを確認します。こうした検査を積み重ねながら、読み書きの困難がどこにあるのかを見ていきます。

どのくらいの子どもがアセスメントを受けているのか

STRAWやURAWSSは、教室で有識者でなくても実施できるアセスメントとして紹介されています。

一方で、実際にアセスメントを受けて支援につながっている子どもは、どのくらいいるのでしょうか。tobiracoのXで呼びかけたところ、次のような声が寄せられました。

「受けた人が周囲にいない。医療機関でも、学校でも、教育センターでもアセスメントはしていない。スクールカウンセラーは検査すら知らなかった」

「児童精神科で受けたくても、新規の場合は半年待ちだった」

その一方で、児童精神科医がSTRAWを実施し、学校の先生がすぐに対応してくれたという、医療と教育の連携による支援の例もありました。ただし、このようなケースはまだ多くないようです。

誰に相談すればよいのか

子どもが読み書きに困難を抱えていると感じたら、まずは担任の先生に相談してみてはいかがでしょうか。

学校での相談が難しい場合は、言語聴覚士、作業療法士、公認心理師、スクールカウンセラー、教育センター、発達外来なども相談先になります。地域によって受けられる検査や支援は異なるため、教育委員会や自治体の相談窓口に問い合わせる方法もあります。

読みの困難があるかどうかを知る手がかりとして、近藤先生は次のような方法も紹介しています。

子どもが持ち帰ったテストで、正解できていない問題の問題文を読み上げます。読み上げたことで子どもが問題の意味を理解し、正解できたなら、内容を理解する力はあっても、「読むこと」が壁になっている可能性があります。

このことを先生に伝え、専門的なアセスメントや、学び方の工夫を相談するきっかけにしてもよいでしょう。

読み書き障害の子どもは理解力があっても、「読み書き」という障壁によって、本来の力を発揮しにくくなります。その障壁がどこにあるのかを見立てることが、アセスメントです。

アセスメントを支援につなげる

アセスメントは、結果を出して終わりではありません。大切なのは、結果をもとに、その子が学びやすくなる方法を考えることです。

たとえば、文字を目で追うことに困難があっても、音声で聞けば内容を理解できる子がいます。文字を拡大したり、行間を広げたり、文字色や背景色を変更したりすることで、読みやすくなることもあります。

教科書や教材を音声で読み上げる「音声教材」も、読みの負担を軽減する方法のひとつです。音声教材は、教科書をデジタル化し、パソコンやタブレット端末で利用できる教材です。

音声での読み上げ、漢字のルビ、文字の拡大、文字色や背景色の変更などができるものもあります。学校の先生に相談して、利用を検討してみてください。無料で使えるものと、一部有料のものがあります。

読み書きの困難があるからといって、学ぶことまであきらめる必要はありません。子どもに合った方法を選ぶことで、本来もっている力を発揮しやすくなります。

まとめ

読み書きのアセスメントは、子どもを評価し、できる・できないを決めるためのものではありません。

その子がどこで困っているのかを知り、学びやすい方法や必要な支援を見つけるための第一歩です。

「努力が足りない」「もっと練習すればできる」と考える前に、一度立ち止まって、子どもの困りごとを丁寧に見つめてみる。そこから、その子に合う学び方が見えてくるかもしれません。

困難そのものをすぐになくすことはできなくても、困難を軽くする方法はあります。アセスメントは、その方法を探すための出発点です。


この記事は、2025年6.7配信のtobiraco通信vol.321「学習障害のアセスメントと支援(1)読み書き編」をもとに、サイト記事として再構成しました。
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