
トビラコ店主からあなたへの手紙
発達障害女子が大切にしたいこと
発達障害のある女の子は、困っていても気づかれにくいことがあります。思春期を迎える前に、自分らしくいられる場所をもち、自分の心と体をケアする方法を知っておくこと。それが、この先の生きやすさにもつながります。
発達障害のある女の子は、男子のように目立った行動を起こすわけでもなく、一見すると何も問題がないように見えることがあります。
「目立たない。だけど、じつはすごく困っている」
そんな女の子たちです。
空気を読みすぎて疲れる
自閉スペクトラム症というと、「空気が読めない」と思われがちです。
でも、反対に「空気を読みすぎて」疲れてしまうケースも少なくありません。
まわりの期待に応えようと無理をして、自分の疲れにも気づかない。体がダウンするまで、がんばってしまうのです。
『うちの火星人 5人全員発達障害の家族を守るための“取扱説明書”』に登場する、著者・平岡禎之さんの長女(自閉スペクトラム症)の話が印象的です。
ママ友とのパーティーで、準備を完璧なまでに整え、ものすごく気を使ってもてなす。ところが、終わると熱を出し、1週間寝込んでしまうのだそうです。

女子の人間関係と同調圧力
こんな女の子の話を聞いたことがあります。
「友達づきあいは、いつもニコニコしていればいいのよ」
母親にそう教えられ、笑ってはいけない場面でもニコニコして、仲間外れにされてしまったそうです。
詳しくは、tobiracoサイトの記事「ウチの子の小学生時代(1)『私の脳みそ取り換えて!』」でご紹介しています。
空気を読む、読めない、読みすぎる。どれも目には見えません。
だからこそ、どこかに「空気を読まなくていい場所」が必要なのではないでしょうか。
『発達障害のある子ども・若者の余暇活動支援』の編著者・加藤浩平さんは、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)などを通して、思春期の発達障害のある子どもたちのコミュニケーションを支援しています。
参加する女の子たちは、「ここでは気を使わなくていいから疲れない」と話します。
クラスの女子には敬遠されてしまうような、好きなキャラクターの話を思い切りできる。フリルやリボン、ピンクを「かわいい」と言わなくてもいい。
その子らしくいられる場所です。

「緊張しない」体験を
もうひとつ大切にしたいのが、自分の心と体の変化に気づくことです。
ある放課後等デイサービスでは、アロマを使った手浴や足浴、マッサージを取り入れていました。
手足が冷たくても、それが「いつもの状態」なので気づかなかった女の子たちが、温かいお湯に手足をつけて、
「わ~、気持ちいい!」
と、声をあげます。
「あたたかくて気持ちいい」を知って初めて、それまで自分の体が冷えていたことにも気づきます。
アロマは、ひとつの例です。
自分が疲れている。緊張している。しんどい。そして、どうすれば少しラクになれるのか。
自分なりの方法を知っておくことは、大人になってからも自分を助けてくれます。

性のトラブルから自分を守る
そして、思春期を迎える前に、もうひとつ伝えておきたいことがあります。
性のことです。
国立障害者リハビリテーションセンターは、発達障害のある子どもが「性のトラブルに巻き込まれやすい」ことについて、いくつかの例を紹介しています。
たとえば、
- 「好きだから」と言われて体を触られ、嫌だったけれど我慢してしまった。
- SNSで知り合った男性と出かけ、「ちょっと休もう」と言われて、ベッドのある部屋へ連れていかれた。
相手の言葉をそのまま受け取ってしまう。自分の気持ちをうまく伝えられない。困っても助けを求められない。

そうしたことが、性のトラブルにつながることがあります。
では、家庭で何を伝えておけばいいのでしょう。
同センターが示しているのは、とても具体的なことです。
- 嫌なことには、「やめて」と言っていい。
- 危険を感じたら、その場から逃げていい。
- ネットで知り合った人の誘いに安易にのらない。
- SNSに個人情報や写真を安易に掲載しない。
そして、もし被害にあったことを子どもが話したら、
「あなたは悪くない」
「話してくれてありがとう」
と、まず伝える。
性の話は、家庭では口にしづらいかもしれません。
でも、「自分のからだは自分のもの」「嫌なことを我慢しなくていい」と知っておくことも、自分を大切にすることのひとつだと思います。
自分を大切にする練習を
思春期前に身につけておきたいことを、3つにまとめてみました。
- 自分らしくいられる時間や場所をもつ。
- 自分の心と体の状態に気づき、ケアする方法をもつ。
- 自分のからだと気持ちを守る方法を知る。
どれも、「自分を大切にする」ことです。
大人になれば、進学、就職、人間関係、家事、子育て、介護など、さまざまな変化があります。
だからこそ、その前から、
- 無理をしている自分に気づく。
- ラクになる方法を知る。
- 嫌なことには「嫌」と言っていいと知る。
そんな練習を、思春期前から少しずつしておけたらと思います。
発達障害女子について知るための本
発達障害のある女の子・女性への支援については、次の本がおすすめです。
- 『発達障害のある女の子・女性の支援』(川上ちひろ・木谷秀勝編著/金子書房/2019年)
- 『続・発達障害のある女の子・女性の支援』(川上ちひろ・木谷秀勝編著/金子書房/2022年)
この記事は、2026年9月26日配信、tobiraco通信vol.334「発達障害女子が大切にしたいこと」をもとに、サイト記事として再構成しました。
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